シンプルで美しいイスラム建築

旅に出たら、行く先々の宗教施設を訪れるのが好きです。仏教のお寺、ヒンドゥー教の寺院や沐浴場、キリスト教の教会、そしてイスラム教のモスク。それらは人々の生活の中心であり、歴史や文化が集約され、意匠を凝らした建築であることが多いので、その国、その町を知るのに最も手っ取り早い場所といえます。これらの中で、イスラム教のモスクは、わたしたちにあまり馴染みのない宗教施設ですね。偶像崇拝を禁じているイスラムの宗教施設であるモスクは、彫刻や絵画などのごてごてした装飾がなく、壁が花や幾何学模様、アラビア文字で飾られており、シンプルながら非常に美しいイスラム建築なのです。

イスラム世界で最も美しい壮麗なイランのモスク イスラム世界で最も美しい壮麗なイランのモスク

イスラム世界で最も美しいイランのモスク

モスクの様式やデザインは年代や地域によって異なります。わたしもこれまでにいろいろな国のモスクを訪れましたが、圧倒的に壮麗で美しかったのはイランのモスクでした。イランに入る前に、憧れだったウズベキスタンでも美しいイスラム建築をたくさん見てきたのですが、イランのモスクを見た時に「ウズベキスタンが先でよかったなあ」と思ったものです。それは、イランのイスラム建築を見た後では、他の何を見てもかすんでしまうような気がしたからです。そんなイランの中でも、特にすごかったのがイスファハンのイマーム広場でした。

「世界の半分」と謳われた都イスファハン

「目もくらむような美しさとは、このことか」と思ったのは、イスファハンのイマーム・モスクを間近で見た時でした。イスファハンは16世紀のサファヴィー朝の都で、その繁栄ぶりは「イスファハンは世界の半分」と謳われるほどでした。その往時の繁栄ぶりを現代に知らしめるイマーム広場は世界遺産にも登録されています。広場の西にメッカを向いて建つのが、ペルシャ建築の最高傑作イマーム・モスクで、コバルトやトルコ石を顔料とした青を基調とする150万枚のタイルで覆われています。ドームの外側も内側から見た天井も壁も、タイルの緻密な模様を見ているだけであっという間に時間がたってしまうほど。超一級の芸術品といえるでしょう。

「バラと詩人の都」シラーズのモスク

歴史的旧跡が200以上もあるというシラーズは、18世紀のザンド朝ペルシャの首都でした。ここにも美しいモスクがたくさんあります。通称「ピンク・モスク」と呼ばれるマスジェデ・ナスィーロル・モスクの見どころは西の礼拝堂で、朝、中庭からステンドグラスを通して光が差し込む堂内は格別の美しさです。また、モスクではありませんが、シャー・チェラグ廟は、内部が壁から天井まで鏡のモザイクで埋め尽くされ、反射する照明の光の洪水が、まるで万華鏡の中にいるかのようにまばゆく美しい霊廟です。