アラビア海で盛んな船の貿易

アラビア海では古くから季節風を利用した航海が行われてきました。インド、中東、東アフリカの各地はアラビア海で結ばれ、貿易などが盛んに行われていたのです。ヴァスコ・ダ・ガマがケニアのマリンディを出発し、アラビア海を渡ってインドに到達したことで、インド航路を発見したのは有名な話ですが、実際にはそれよりずっと前からこの地域の人々は自由に行き来していました。ガマも航海に慣れたインド人に水先案内してもらっていますので、インド航路の「発見」とは、ヨーロッパ人がそれを初めて知ったということにすぎないのですね。それが1498年、今から500年以上も前のことです。

木造帆船ダウでアラビア海を船旅する人々(前編) 木造帆船ダウでアラビア海を船旅する人々(前編)

大型木造帆船ダウの活躍

その当時、アラビア海を渡るのに使われていた大型の木造帆船を「ダウ」といいます。帆船でエンジンがない船です。風がないと航行できないので、人々は季節風が吹く時季に航行したのです。ダウは1000年ほど前に登場した船ですが、驚くべきことに今でもほとんど当時のままのスタイルで造られ続けています(エンジン付きダウもありますが)。アラビアの砂漠地帯、東アフリカ沿岸、インド西海岸には、現代の大型貨物船が着く港のそばにダウ専用の船着場さえあるほどです。ダウは大型船が着岸できない小さな港にも行けますし、貨物の量が少なくても運んでくれるので、今でも重宝されるのです。

ダウはどうやって造られているのか

ダウは砂浜で造られます。専用の造船所などはありません。鉄の釘をまったく使わずに造られているダウもかつては数多く造られました。それはアラブの伝説で、「インド洋の海底には磁石の山があり、鉄釘を打った船がその上にさしかかると、すべての釘が抜け、船体はばらばらになって沈んでしまう」といわれていたからだそうです。そのため、板に穴を開け、ロープで縫い合わせて製造されました。ロープはヤシの繊維です。これは主にインド原産のものが使用され、板となるチーク材といっしょにインドから中東各地に輸出されました。現在でも中東やインドには、この鉄釘を使わない縫合船が残っているそうです。