日本の江戸時代は「犯罪天国」ではなかった

「刃物を持って歩く」というと、昨今の事情からするとずいぶん物騒な印象を受けますが、江戸時代には日本でも武士なら刀を下げて歩くのは当たり前でした。そうだからといって、刀による殺傷事件が日常茶飯だったわけではありません。有名な「忠臣蔵」のように武士でも大義名分がなく刀を抜いて人に斬りつければ重罪になった訳で、「武器を持つこと=犯罪率アップ」ではありません。むしろ世界的に見れば、当時の江戸はかなり治安がいいほうだったようです。

イエメンは日本の江戸時代? ナイフを腰に帯びた人が町なかを歩く、世界遺産の旧市街へ イエメンは日本の江戸時代? ナイフを腰に帯びた人が町なかを歩く、世界遺産の旧市街へ

「アラブの刀」、ジャンビーヤ

さて、日本の江戸時代さながら、今でも成人男性がナイフを腰にさして、町をふつうに歩いている国があります。それがイエメンです。アラビア半島では、昔から男性は「ジャンビーヤ」というカーブのついた両刃の短刀を腰のベルトにさし、携帯する習慣がありました。現在ではその習慣は廃れているところが多いのですが、アラビア半島の南西の角にある国イエメンでは、今でも成人男性はこのジャンビーヤを付けて町を闊歩しているのです。

“武器”というよりも“身だしなみ”

イエメンの首都サナアは、標高2300mにある高原都市。世界遺産にも登録されている旧市街には、中世に造られた高層住宅がそびえ、曲がりくねった狭い街路が続いています。アラビア服に身を包み、腰にナイフをさした男たちが歩く姿を見ていると、まるで過去にタイムスリップしてしまったかのような気分になります。“ナイフ”と言えば怖い感じがする人もいるでしょうけれど、イエメンでは“武器”というより、男の身だしなみという側面が強いのです。その人が属する集団や階級が、この短刀のジャンビーヤによってわかるからです。そのため、実際に使うことはまずなく、刃も研がれていないこともあります。この短剣は、男のプライドのシンボルとも言えるのです。

お土産用のジャンビーヤも売っている

サナアの町を歩いていると、「きっと日本も江戸時代はこうだったのだろうか」とか、「今も武士が残っていたら、日本でもこんな感じで腰に刀を差して歩いているのでは」と想像がふくらみます。イエメンの街角にはこのジャンビーヤを売るショップがあり、手の込んだベルトやホルダーなどは“芸術的”ともいえるほどです。お土産用のものから、アンティークとなる年代ものまでいろいろあるので、見てみましょう。ジャンビーヤの刃の長さは包丁よりも短いものがありますが、刃渡りが15cm以上あると銃刀法に引っかかりますので、お土産として購入したいのなら税関に問い合わせたほうがいいでしょう。もちろんジャンビーヤは機内持ち込み厳禁で、見つかれば没収ですから気をつけて下さい。