アンコールワットのハイライトとも言える第一回廊のレリーフ

「世界遺産アンコールワット徹底解説!」その2からの続きです。西参道を渡り切り、階段を上るとそこは広場のような「十字型テラス」になります。テラスの周囲はナーガの欄干が。階段にあるシンハ象などを鑑賞しつつさらに進むと、寺院入口である大塔門に出ます。塔門の下を抜けてまっすぐ進むと中央祠堂に向かう十字回廊に出ますが、ここはそのはやる気持ちを抑えて、まずは手前にある第一回廊を見て回りましょう。この回廊の長さは、東西215m、南北187m。その内側の壁面にあるレリーフ(浮き彫り)は、クメール美術の到達点のひとつとも言われ、アンコールワット観光のハイライトであることはまちがいないです。全部きちんと見ると大変ですが、ここはがんばってトライしてみましょう。ただし、ツアーでは代表的なレリーフしか見ないかもしれません。

十字形テラスから大塔門へ。ここを抜けると第一回廊 十字形テラスから大塔門へ。ここを抜けると第一回廊

第一回廊西面北側を埋める『ラーマーヤナ』の物語

この第一回廊のレリーフ、まず参道から入った西面から見ていきましょう。西面はインドを代表する二大古典叙事詩のレリーフです。大塔門を挟んで北側(入って左)は、『ラーマーヤナ』の物語。魔王ラーヴァナによってさらわれた妃シータを助けに、ラーマ王子がランカ島(現在のスリランカ)に向かうというのが大まかなストーリーです。アンコールワットは、ヴィシュヌ神に捧げられた寺院なので、その化身であるラーマ王子が主人公の『ラーマーヤナ』の浮き彫りがあるのは納得ですね。ラーマは途中で猿の国のお家騒動に介入し、猿の武将ハヌマーンがラーマの味方になります。このハヌマーンが戦いで大活躍するのですが、そのためかハヌマーンは東南アジアでは人気のキャラクターになりました。さて、ラーヴァナを倒して戦いに勝利したラーマはシータを連れ帰るのですが、さらわれていた間の彼女の貞節を疑います。最後にはシータの貞節は晴れるのですが、それは彼女を失うことでもありました。

東南アジアに広がる『ラーマーヤナ』の影響

全長50mあまりある『ラーマーヤナ』のレリーフで見応えがあるのは、ハヌマーンの肩の上に乗って矢を射るラーマ王子や、多くの手を持つ魔王ラーヴァナ、そして猿軍団の活躍などの戦闘シーンでしょう。『ラーマーヤナ』は東南アジアに広まり、仏教国となったタイやイスラーム教徒が多いジャワ島などでも、その物語は今も伝えられています。バリやジョグジャカルタで見る伝統舞踊や影絵芝居には、この『ラーマーヤナ』を題材としたものがありますし、タイでは民族叙事詩の『ラーマキエン』は、この『ラーマーヤナ』が元になっています。(その4に続く)