第一回廊西面南側は『マハーバーラタ』のレリーフが

「世界遺産アンコールワット徹底解説!」その3からの続きです。大塔門を挟んで第一回廊西面南側(入って右)は、インド二大古典叙事詩のもうひとつ、『マハーバーラタ』のレリーフです。これは古代インドのコーサラ国に起きた、2つの王家の継承をめぐる争いを描いたもので、話の長さや登場人物の多さは『ラーマーヤナ』をしのぎ、ストーリーを覚えるのも大変です。以前、この叙事詩の日本語訳が出たことがありましたが9巻に及ぶもので、読むのを断念した思い出が私にはあります(笑)。さて、ここのレリーフのハイライトもダイナミックな戦闘シーンです。左から攻めているのがカウラヴァ軍、右から攻めているのがパーンダヴァ軍で、それが中央あたりで激突します。多くのキャラクターが登場しますが、物語の主役といえるのがパーンダヴァ側のアルジュナ王子でしょう。

第一回廊東面南側にある「乳海攪拌」のレリーフは必見! 第一回廊東面南側にある「乳海攪拌」のレリーフは必見!

南面は、スーリヤヴァルマン2世の偉業と天国と地獄

西面のレリーフを見終わったら、反時計回りに回廊を回ってみましょう。レリーフは各面の中央付近の祠堂で分割されています。南面の西側は、アンコールワットを建造した王スーリヤヴァルマン2世の偉業を描いたもので、軍隊のパレードが続く様子が描写されています。当時、実在する王を描くことは稀でしたが、王の神格化が始まっていたのでしょうか。南面東側は、3段に分割して描かれている「天国と地獄」です。上段が天国、下段が地獄というのは世界共通。ヤマ神(閻魔大王)による最後の審判の後に、人々はどちらに行くか振り分けられます。これも全世界の美術共通のことだと思いますが、見ていて面白いのは地獄の描写の方ですね。

東面南側の「乳海攪拌」は必見!

次は東面です。東面南側は49mの長さに渡って描かれている「乳海攪拌」です。「乳海攪拌」とは不老不死の甘露アムリタを手に入れるため、神々と阿修羅が協力して大亀の上に乗ったマンダラ山に大蛇を巻きつけ、両端から引っ張って1000年に渡り攪拌作業を続けた神話です。アムリタが出現した後は、それを巡って神々と阿修羅が争い、最終的には神々が勝って不老不死になります。この「乳海攪拌」はクメール王朝ではポピュラーなモチーフで、他の寺院遺跡でも見ることができます。また、バンコクのスワンナプーム空港出発ゲートにこの「乳海攪拌」の大きな像があり、見た方もいらっしゃるのではないでしょうか。東面北側は、主にヴィシュヌ神の阿修羅に対する勝利が描かれています。

北面のレリーフは、時代が下って作風が違う

さて、最後の北面です。こちらのレリーフが描かれたのは、他の面より時代が下った16世紀とのこと。そのため、彫りが薄くなっているなど、作風がやや異なります。北面東側が「クリシュナと悪神との戦い」、北面西側が「アムリタを巡る神々と阿修羅の戦い」が描かれています。さあ、膨大なレリーフの鑑賞はいかがでしたか? きっちり見るとなかなか大変ですが、是非一周してみてくださいね。(その5に続く)