チャンパ軍との激しい戦闘を描いた東面のレリーフ

「世界遺産アンコール・トム徹底解説」その2からの続きです。バイヨンに入場しますが、ここでまずすぐに中央祠堂まで行きたい気持ちを抑えて、手前の第一回廊のレリーフ(浮き彫り)鑑賞から観光はスタートです。アンコールワットも第一回廊のレリーフが大きな見どころでしたが、ここバイヨンもそれに匹敵する躍動感で描かれています。ただし、ヒンドゥー寺院として建てられたアンコールワットが神話や古大叙事詩で彩られていたのに対し、こちらは実際にあった戦争や庶民の日常など、もっと現世的な出来事がつづられています。それでは正面口となる東面のレリーフから見ていきましょう。ここで描かれているのは、クメール軍とチャンパ軍との激しい戦闘です。東面南側は戦争へ向かうクメール軍の行進で、ゾウに乗った指揮官や歩く兵卒、食料を積んだ牛車、中国人兵士、女性たちも描かれています。東面北側へ進むと、三段に渡って両軍の激しい戦闘シーンが描かれています。

カンボジアの世界遺産「アンコール・トム」徹底解説 その3 バイヨン第一回廊のレリーフ カンボジアの世界遺産「アンコール・トム」徹底解説 その3 バイヨン第一回廊のレリーフ

庶民の平和の生活を描いた南面のレリーフ

南面東側の上段では、アンコールをチャンパ軍から奪還した後に起きた、トンレサップ湖での水上戦の模様が描かれています。中には湖に落ちてワニに食べられる兵士の姿も。一方、下段は打って変わって、庶民の生活が描かれています。これはジャヤヴァルマン7世がもたらした「平和」を意味しているのだとか。今日では、このレリーフが当時の人々の生活ぶりを示す、貴重な歴史的資料になっています。市場の様子や出産、闘鶏の場面などを、じっくり見てみましょう。南面西側は、ゾウに乗ったクメール軍が描かれていますが、未完成部分も多くなっています。

見学者が少ない西面と北面のレリーフ

西面南側はいくつかのシーンからなっています。森の中を行軍するクメール兵士、寺院建設の様子、クメール人同士の内乱など。西面北側は、退却するクメール軍兵士などです。見学者もここまでくると、数が減ってきます。北面は未完成で、はっきりしないレリーフも多く、ツアーなどではここまで来ることはあまりないでしょう。娯楽をテーマにした場面や、チャンパ軍との戦いが描かれています。これらの第一回廊のレリーフは、アンコールワットのものと異なり、ストーリーを知らなくても場面場面を楽しめるものも多いのが特徴ですね。(その4に続く)