時代が1世紀ほど下った第二回廊のレリーフ

「世界遺産アンコール・トム徹底解説」その3からの続きです。第一回廊と上部テラスとの間にあるのが、第二回廊です。東西約80m、南北約70mと、完全な正方形ではありません。ここは増改築が何度も行われたようで、多くの小部屋が回廊で結ばれる入り組んだ造りになっています。第一回廊のレリーフがジャヤヴァルマン7世時代のものとみられているのに対し、こちらはそれより一世紀ほどたったジャヤヴァルマン8世時代のもの。その時代になると大乗仏教から再びヒンドゥー教へと宗教が戻り、このバイヨンもヒンドゥー寺院に改修されましたが、そのためここのレリーフはインドの神話にまつわるものが多くなっています。

カンボジアの世界遺産「アンコール・トム」徹底解説 その4 四面仏塔の「クメールの微笑み」 カンボジアの世界遺産「アンコール・トム」徹底解説 その4 四面仏塔の「クメールの微笑み」

「乳海攪拌」と「ライ王伝説」のレリーフ

第二回廊のレリーフには、「乳海攪拌」などのおなじみの神話のモチーフもありますが、ここで注目したいのは「ライ王伝説」のレリーフでしょう。これは毒蛇と戦い、血を浴びてライ病(ハンセン病)になった王の伝説で、クメール王朝4代目の王でハンセン病で亡くなったヤショヴァルマン1世に重ね合わせているとも言われます。また、ハンセン病で亡くなったのはジャヤヴァルマン7世とした、三島由紀夫の戯曲『癩王のテラス』という作品もあるので、アンコール・トムに行く前に読んでおくのもいいかもしれません。

四面仏塔が並ぶテラスで往時を偲ぶ

第二回廊から急な階段を上ると、円形の上部テラスに出ます。テラスの位置は高さ25m。ここには、バイヨンのハイライトとなっている四面仏塔が並び、その真ん中に高さ43mの中央祠堂があります。四面仏塔の仏顔は観世音菩薩とされており、全部で200近くあるとか。顔の大きさは2mと巨大です。表情はみな微妙に異なり、同じものはないと言われています。これが「クメールの微笑み」と呼ばれ、アンコール遺跡のシンボルともなっているのです。ここでは、しばし往時の王国の繁栄に思いを馳せてみましょう。

ピラミッド型の寺院「バプーオン」

アンコール・トムのハイライト、バイヨンの観光は終わりましたが、敷地内にはまだまだ見ておきたい遺跡があります。バイヨンから北西に5分ほど歩いた場所にある「バプーオン」は、バイヨンよりも古い11世紀中頃に建てられたピラミッド型の寺院です。これはヒンドゥー教のシヴァ神を祀る寺院で、5層の基壇を持ち、かつては高い塔を持つ中央祠堂がありました。ここにも回廊に「ラーマーヤナ」などの神話のレリーフが残っています。このバプーオンのすぐ北にあるのが王宮跡です。敷地は東西600m、南北250mと広く、歴代の王が住んでいましたが、寺院と違っても木造だったため、建物は焼失して残っていません。(その5に続く)