国王が蛇の精と会っていた王室寺院「ピミアナカス」

「世界遺産アンコール・トム徹底解説」その4からの続きです。王宮跡での見どころは、「ピミアナカス」と呼ばれる王室寺院です。これは「天上の寺院」という意味で、11世紀初頭のスールヤヴァルマン1世の時代に完成しました。マヤのピラミッドを思わせる3層の基壇の上に回廊があり、その中心の塔堂には蛇の精が住んでいたと信じられていました。クメールの王はこの階段を毎日上って参拝していたといいます。この寺院の北には二つの池がありますが、かつてはきれいに整備された沐浴場だったとか。大きい方が女性、小さい方が男性向けだそうです。王宮にはきっと多くの女官がいたのでしょうね。

王が軍の閲兵を行った「象のテラス」

王宮をその正面口の東側から出ると、そこには南北に300mある「象のテラス」に出ます。ここから東へまっすぐ続く道があり、城壁の「勝利の門」へと続いています。ここは王宮から出てきた王が、閲兵や軍の壮行式を行った場所なのです。テラスの上に立ち、王になった気分で、目の前に整列したクメール軍を想像してみましょう。このテラスの正面には、ゾウの頭部の石像が6体あり、ここから後に「象のテラス」の名がついたとか。かつては胴体の部分の彫刻も表面にあったのかもしれませんが、現在はゾウの鼻が柱になっているぐらいしかわかりにくいですね。

三島由紀夫の戯曲にも出てくる「ライ王のテラス」

象のテラスの北側には、ジャヤヴァルマン7世によって造られた「ライ王のテラス」があります。高さ6m、長さ25m。ここにライ病になった(ように見える)王の坐像があることから、この名前がついたテラスです。ちなみに現在ここにあるその坐像はレプリカで、本物はプノンペンの国立博物館にあります。「その4」で述べた三島由紀夫の戯曲『癩王のテラス』とは、ここのことです。見どころはテラス側壁のレリーフで、二重構造になった壁と壁の間の浮き彫りは近年まで土砂に埋もれていたため、保存状態が良いですね。浮き彫りのモチーフは、デヴァター(女神)がほとんどです。

それ以外にも小さな寺院が点在

ここまでが、アンコール・トムの主な見どころです。「主な」としましたが、それでも結構ありますよね。見学所要時間は、途中の移動も入れると3〜4時間はかかるでしょう。ほかにも、王宮の北側にある中央祠堂のみの小さな寺院「プリヤ・パリライ」、アンコール・トムの北東エリアにある5つの祠堂からなる「プリヤ・ピトゥ」、そのすぐ南の東へ向かう道を挟んで南北に対で建てられた「クリアン」、そして兵士が凱旋した「勝利の門」なども時間があれば見ておきたいですね。一般的なツアーでは、アンコール・トムの後、勝利の門を抜けて、タ・プロームなどの「小回りコース」の遺跡へと向かいます。それでは、アンコール・トムの観光をぜひ楽しんできてくださいね。