ほとんどの観光客は中心部の遺跡しか見ないが…

広い範囲に遺跡が散らばっている世界遺産のアンコール遺跡ですが、観光客の多くは、アンコールワットとアンコール・トムを中心とした中心部しか行かないでしょう。少し離れた郊外はツアーに入っていないことも多く、オプショナルツアーで行くのが一般的です。フリープランで行く場合でもやはり足が必要なので、ツアーかチャーターで行くのが賢明ですね。今回紹介するのは、そうした郊外遺跡の中でも、最も人気のある「バンテアイ・スレイ」です。アンコールワットから北東へ約20kmにあるこの寺院は、規模は大きくはないのものの、その精巧なレリーフは他の遺跡に比べてもかなり見ごたえがあります。

美しいデヴァターの彫像が見ごたえあり

「バンテアイ」は「砦」、「スレイ」は「女」で、「女の砦」を意味します。これはここにある、美しいデヴァター(女神)の彫像から呼ばれるようになったのでしょうか。建てられたのは10世紀中頃。三重の周壁に囲まれた中央部に、低い基壇の上に建てられた三つの祠堂が並んでいます。正門となるのは東側の塔門で、リンガの並んだ参道を進み、周壁を越えていくと、やがて祠堂が見えてくるでしょう。祠堂の外壁は、多くのレリーフで飾られています。硬い赤色砂岩に刻まれたその彫りの深さや彫刻の精巧さは、建築当時の雰囲気を今に残しています。そのモチーフの多くはインドの神話に基づくもので、古代叙事詩の「ラーマーヤナ」や「マハーバーラタ」の物語もあります。しかし、もっとも有名なのは南北の祠堂にあるデヴァター像で、「東洋のモナリザ」とも言われるその美しさは評判です。

フランスの有名作家が、かつて盗掘をしたという歴史も

このバンテアイ・スレイですが、密林の中に埋もれていて、長い間、その存在を忘れられていました。再発見されたのは1914年のこと。『人間の条件』などで知られるフランスの作家で、のちに文化相も務めたアンドレ・マルローは、作家になる前の20代の時にこの地を訪れ、彫刻を盗んで逮捕されるという事件を1923年に起こしています。その事件を基にした小説が『王道』です。

バンテアイ・スレイに行く現地発ツアーも出ている

このバンテアイ・スレイに行くには、車やトゥクトゥクをチャーターしていくか、オプショナルツアーや現地発ツアーに参加していくのが一般的です。バンテアイ・スレイだけを見る半日ツアーもありますが、せっかくここまで来たら周辺にあるベン・メリア、クバール・スピアン、プノン・クーレンといった他の遺跡と組み合わせた1日ツアーに参加してみましょう。ただし全部見ると10時間以上になります。それでは、アンコール遺跡に行ったら、ぜひバンテアイ・スレイも見に行ってくださいね!