- 井伊 誠
- カンボジア在住。遺跡以外のカンボジアを旅する本トーマダーの発行人・編集人。王立プノンペン大学外国語研究所にてカンボジア語を学んだ後、人間の暮らしをテーマとして取材活動を開始。お気に入りはカンボジアの広々とした空、ちょっとしつこいカンボジア人のギャグ、バイクでカンボジアの田舎を駆け巡ること、酒の時間。
出発エリアをに変更しました。
カンポットの町から見たボーコー高原
カンボジアで観光といえば、なんといっても真っ先に思いつくのが前回ご紹介したアンコール遺跡群だと思いますが、ほかにもカンボジアの歴史と自然を肌で感じることができる興味深い場所があります。そのひとつが、カンボジア南部のカンポート州に位置するボーコー国立公園(面積約14万ヘクタール)です。カンボジア最大の保護区のひとつに数えられるボーコー国立公園は、かつて世界遺産の候補にもなったことがある自然豊かなところで、原生林に覆われたドムレイ山脈の南部に位置します。ここでは38種の希少な植物、249種の鳥類、トラやアジアゾウを含む29種(うち9種は絶滅の危機に瀕している)のほ乳類、9種の爬虫類が生息していると報告されているのです。
カジノの跡。内部の床に施された美しいタイルの装飾は当時の反映を物語っているかのよう
標高1080メートルに位置するボーコー国立公園の高原には、フランス植民地時代、当局により避暑地としてボーコー・ヒル・ステーションが建設されました。最盛期の1950年から60年代には、ホテル(ボーコーパレス)やカソリック教会、カジノなどが建設され、冷涼な気候(最高気温37度、最低気温14.7度)を求めてやって来るフランス人や王族たちで賑わいを見せました。
廃墟に積もった苔の厚みが時間の流れを感じさせる
しかし、1970年代の内戦でヒルステーョンは大きな傷を受け、クメールルージュとベトナム軍との戦場になったこともあって、廃墟と化してしまったのです。カソリック教会とそこから500メートルほどしか離れていないボコーパレスでは、それぞれに立てこもったクメールルージュ軍とベトナム軍とが激しい撃ち合いを繰り広げたと言われ、苔むして廃墟と化した建物にはそうした現代史の傷が今でも残っています。時代が下り、戦乱が終わった今、この「ゴーストタウン」を見に行くのが、観光客の間で静かな人気を呼んでいるのです。
断崖から眺めたジャングルとタイランド湾
高原から眺める絶景もボーコー国立公園の魅力です。ホテル跡の裏手は断崖になっており、天気がよければそこからジャングルやカンボジア南部の景色、その先に広がるタイランド湾やベトナム領のフーコック島を見渡すことができるのです。土地柄、このあたりは一年を通して雨が多く、ボーコーの高原では霧が発生する確率も高くなっていますが、廃墟を包み込む霧もまた、ゴーストタウンの演出に一役買ってくれるため、ボーコーは晴天下でなくとも楽しめるところだと言えるでしょう。ボーコー国立公園を訪れて、激動のカンボジア現代史を肌で感じてみませんか。
霧に包まれたカソリック教会
■ボーコー国立公園
アクセス:カンポット州の州都カンポットから旅行会社やゲストハウスが主催するツアーを利用するのが便利。国立公園と町の間を往復する車、簡単な昼食(水つき)、ガイドがセットになって5ドル程度(国立公園の入場料5ドルは含まれていない)から。首都プノンペンからカンポット州までは、Hua Lian社が直通バスを走らせている。片道4ドル、所要約4〜5時間。同社のバス乗り場およびチケット売場はプノンペンのオリンピックスタジアム北西角にある。
Hua Lian Transportation CO.LTD 電話:012-376-807(チケットサービス)
備考:野生動物の多くは国立公園の中心部から離れたところに生息するため観察するのは難しい。また、天候によっては肌寒く感じることもあるので上着を用意しておくといい。
※記事は掲載日時点での情報であり変更されている可能性もあります。ご了承下さい。(掲載日:2007/12/25)
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