不本意ながら一生分の冒険をした両親

山越えすればオーバーヒートするし、いきなり勝手に相乗りの人を乗せてしまうし(その人は「お菓子食べるか?」と持っていたお菓子を差し出してきたそうです)、「トイレに行きたい」と言えば断崖に突き出した2枚の板の先っぽで用を足すはめになり……冒険型バックパッカーでも、これだけの体験をたった2日ほどでするなんて、なかなかないですよね。そんなとんでもない珍道中の末、ついに重慶の日本領事館で「帰国のための渡航書」を受け取ることができました。そのときは、窓口の大行列(横入りも多い)にしびれを切らしていると、たまたまそこにいた日本人が手続きを手伝ってくれたそうです。

両親の旅行人生最大のピンチ!中国、九寨溝でパスポートを盗難されて(その3) 両親の旅行人生最大のピンチ!中国、九寨溝でパスポートを盗難されて(その3)

親切も受けたが文句も言われ

終わってみれば笑い話ですが、本人たちはまさに寿命の縮まる経験をしました。しかし、ツアーの添乗員さんやたどたどしい日本語通訳さん、そして重慶で申請を手助けしてくれた日本人の皆さんがいなければ、二人はもっともっと、想像を絶する困難を乗り越えなければならなかったはずです。また、ツアー客の中には「あなたのせいで、楽しい旅行に不愉快な思いをさせられた!」と嫌な顔をする人もいたそうです。それも心の狭い話だと思いますが、団体旅行というのはこういうことを言う人もいるのですよね。団体ツアーでのこうしたアクシデントは、周りにも迷惑をかけるのです。

最後に「ちょっといい話」もご紹介

実は、この不本意な大冒険には心温まる後日談があります。例の通訳の女性が、もっと日本語を勉強するため、この事件の1年後に来日して日本語学校へ通い始めたのです。両親は恩返しの意味で彼女をあちこちに連れて行ってあげました。彼女はその親切に涙を流し、両親を「日本のお父さんお母さん」と呼んで慕っていました。やがて日本人と結婚し、今もお互い年賀状をやりとりしているそうです。ひょんなことから国際交流は始まるのですね。それにしても、母のパスポート盗難という失態がなければ、これらのことは一つも起こらなかったことです。旅は異なもの。私は、自分なら65歳でそんなスリルは経験したくありませんが……さてあなたは?