- 原口純子
- 1993年より北京在住。日本の雑誌、新聞、WEBを中心に中国のライフスタイル関連の記事、書籍を執筆。作品に『おどる!中国人』『北京上海 小さな街物語』『歳時記 中国雑貨』など。書籍編集も手がけ編書に『在中日本人108人の それでも私たちが中国に住む理由』『知日 なぜ中国人は、日本が好きなのか!』など。
出発エリアをに変更しました。
「宜興紫砂展」の会場入り口には、こんな案内が置かれています
2007年現在、太和門、太和殿などが改装工事中の北京。メインの建物が改装中のぶんを補うためか、一部の建物を利用して、ぜひ見ておきたい展示が随時、開催されています。その一つ、茶道具や、文房具に興味のある人にぜひ推薦したいのが、9月〜12月末までの予定で開催中の「宜興紫砂展」。「宜興」は、中国南部の江蘇省の古都で、昔から良質の粘土がとれ、赤みがかったその粘土は、「紫砂」と呼ばれて、これを素材にした茶器は最高級のものとされています。今回開催の展示は、故宮のなかで皇帝が紫砂で作らせ、愛用していた逸品の数々。どれも故宮のなかに秘蔵され続け、一度も故宮の外に出たことがないとくに貴重な品々。貴重な機会を逃したくない展示です。
皇帝が自ら焼かせたお茶道具の数々。旅先での携帯用など珍しいものも
この「宜興紫砂展」が開催されている「斎宮」は、故宮の東側の「東内路」エリアにあります。正面南門から、北へ向ってすすむと、太和殿、中和殿、保和殿とメインの建物が一直線上に現れますが、そのさらに北に、乾清門があります。この門に向って右手に、「内東門」があり、その門を入るとすぐ、右手に「斎宮」への通路があります。「斎宮」はその昔、皇帝が儀式の前に、身を清めた場所。メインの建物からはすこしはずれたエリアなので、観光客も少なく、往時の皇帝の暮らしを感じさせる静かな雰囲気。皇帝の私物を見るのに、ぴったりです。
いつも観光客でにぎわう故宮の南門「午門」
展示されているのは、故宮に秘蔵されていた歴代皇帝、特に清朝を代表する、乾隆帝(1736〜1795)の愛用品が多くを占めます。清代のもっとも栄えた時代に君臨し、在位60年を誇る大皇帝だった乾隆帝は、歴代皇帝のなかでも指折りの趣味人。お茶の道具にもこだわり、自分の作った詩句を表面に刻んで焼かせていた素晴らしい茶器たち。また南部への行幸を好んだ皇帝だけに、旅先に携帯した皇帝用のお茶セット、好んで飲んだという皇帝用のブーアール茶など、珍しいものもあり、中国茶と皇帝の深い関係に感動、です。
またお茶の道具のほか、「紫砂」で作った硯など、皇帝の私生活に使われた珍しい文房具も展示されています。太和殿、といった主な見所が工事中(終了は来年の予定)の北京ですが、だからこそむしろ、メインルートからすこしはずれ、普段見られないものを見ておくのも、いいチャンスだと思います。この展示は、故宮の入場チケットがあれば、入場は無料。北京に10年以上住んでいる私でも、はじめて目にした皇帝のお茶道具、文房具の数々、すばらしい工芸品に打たれ、みなさまにも推薦したくなりました!
■故宮博物院
地下鉄「天安門東」または「天安門西」下車、徒歩10分弱。入場料60元。チケット売り場の営業時間は、4月1日〜10月31日は8:30〜16:00、11月1日〜3月31日は8:30〜15:30 閉門は17:00。無休。
※記事は掲載日時点での情報であり変更されている可能性もあります。ご了承下さい。(掲載日:2007/10/19)
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