北京料理なのに北京料理らしくない料理を出すレストラン

「北京料理ですか?」と聞かれると、「たぶん北京料理」としか答えられません。粉もので包んで食べたり、茶色の地味な料理が多いので、中国の東北料理にも似ています。いったい中国のどの地方の料理なのかはともあれ、いつ行ってもいっぱいのお客が、美味しいお店の証明です。そのお店は、北京の胡同の奥にある「悦賓飯館」です。胡同とは、北京の路地のことです。伝統建築の四合院造りの民居が並ぶ胡同にあるレストランと言えば、隠れ家的なところも少なくありません。そんなレストランは、ものすごくおしゃれ。木製の家具で統一されたナチュラルな雰囲気は、中国と言うより東南アジア。でも、悦賓飯館は、違います。

悦賓飯館(北京市翠花胡同43号、中国美術館の向かい。北京駅前から103、104路バスで中国美術館下車)の料理は、とにかく色が濃い! 悦賓飯館(北京市翠花胡同43号、中国美術館の向かい。北京駅前から103、104路バスで中国美術館下車)の料理は、とにかく色が濃い!

胡同の奥深くにある悦賓飯館

悦賓飯館は、北京の顔とも言うべき繁華街の王府井の北側に位置する翠花胡同にあります。大通りから奥まった通りにあるので、本当に目立ちません。隠れ家レストランそのものなんですが、インテリアもお店の雰囲気もまさに普通。おしゃれとかインスタ映えなんて言葉とは無縁。白いテーブルクロスがかかったテーブルには、日本の古い家でも使っていそうな椅子。ご主人が立っているカウンターの下がガラスケースになっており、そこに冷菜が並んでいます。昔の中国の食堂そのもの。悦賓飯館に行くと、お客でいっぱい店内に「地元の人に愛されている食堂って、こんなところなんだな」と思います。一見、古い以外の特徴がないレストランですが、悦賓飯館には特別な歴史があります。

胡同にある隠れ家的なレストランと言えば、インテリアがおしゃれ! どこも東南アジアっぽく、中国と言う感じはしない 胡同にある隠れ家的なレストランと言えば、インテリアがおしゃれ! どこも東南アジアっぽく、中国と言う感じはしない

改革開放から始まった悦賓飯館

悦賓飯館の入り口には「中国個体第一家」と書かれています。改革開放後、北京で初めてできた個人経営のレストランと言う意味です。経営者の劉桂仙さんは、当時は、まだ40代。5人の子供がおり、4番目と5番目の息子には、仕事がなかったそうです。息子たちの就職問題を解決するために、数々の面倒を乗り越え、個人の食堂の営業許可を得ました。1980年9月30日に北京で最初の個人経営のレストランとしてオープンすると、人々は国営食堂の適当な味にうんざりしていたのかもしれません。悦賓飯館がある胡同の入り口まで人が並ぶようになりました。当時、昼ご飯の営業1日分の収入だけで労働者の1か月の給料以上の収入があったと言われています。

悦賓飯館に行ったら、一緒に注文したい「北冰洋」。昔から北京で飲まれている炭酸飲料。昔懐かしの味で今も人気 悦賓飯館に行ったら、一緒に注文したい「北冰洋」。昔から北京で飲まれている炭酸飲料。昔懐かしの味で今も人気

悦賓飯館のおすすめ料理

悦賓飯館は、開業から38年間ずっと胡同の奥にある人気店です。おすすめ料理は、蒜泥肘子、五絲桶、糖醋排骨、冬瓜粉絲魚丸湯などなど。豚の関節を煮込んで刻んだものに醤油とニンニクのタレをかけた蒜泥肘子。肉や春雨など五種類の千切りの具を包んで揚げたものを薄い小麦粉生地で包んで食べる五絲桶。この二つの料理は、どのテーブルも注文する看板料理です。私にとって悦賓飯館の料理はどれも、他の店では食べられないような庶民的な北京料理ばかり。しかも量はたっぷりで値段は、信じられないぐらい安いんです。これが本当の胡同の奥深くにある外国人にはあまり知られていない秘密のレストランです。北京の胡同でごはんを食べるなら、悦賓飯館がおすすめ!

五絲桶は、小麦粉生地と巻いて食べる具に分かれて出てくる。こんな変わった料理は、悦賓飯館でしか食べたことがない 五絲桶は、小麦粉生地と巻いて食べる具に分かれて出てくる。こんな変わった料理は、悦賓飯館でしか食べたことがない