「謝絶参観」の貼り紙が目につく北京の観光地

「謝絶参観」、「私人宅、禁止参観」。こんな張り紙が、あちこちで目につきます。ここに住み続けるって、本当に大変なんですね。ここは、北京中心部にある「南鑼鼓巷(ナンルオグーシャン)」と呼ばれる胡同です。胡同とは、モンゴル語で「井戸」をさす言葉が起源とも言われていますが、路地のことです。南鑼鼓巷は、四合院造りの伝統家屋が並ぶ路地におしゃれなカフェやバー、雑貨屋さんが集まったいるところです。車一台がやっとの狭い通りに中国にしてはこじゃれたお店が並んでいるところは、他にはありません。そこが中国の若者に受け、南鑼鼓巷は、今では北京で最も集客力がある観光地のひとつになりました。

「庶民の生活を邪魔しないでくれ! 協力ありがとう!」。こんな張り紙も目につく 「庶民の生活を邪魔しないでくれ! 協力ありがとう!」。こんな張り紙も目につく

北京の人気観光地の南鑼鼓巷が、全く有名でなかった頃

季節のよい時期の週末になると、南鑼鼓巷は、身動きできないほど人、人、人であふれかえります。私が北京に留学したのは、2008年の北京五輪の1年前の2007年でした。南鑼鼓巷のすぐそばに、中央戯劇学院という大学があります。中国を代表する女優、チャン・ツイイーやビッキー・チャオの母校です。南鑼鼓巷には、中央戯劇学院の欧米人留学生が開いたカフェや雑貨屋さんが何軒かありました。そんなお店と北京の伝統的な胡同の組み合わせが、新鮮でおしゃれな感じがしました。とは言っても当時は、わざわざ南鑼鼓巷を目指してやってくる観光客なんて皆無の時代です。

南鑼鼓巷の転機が来たのは、いったいいつ?

南鑼鼓巷の転機は、やはり北京五輪です。それまでは静かな通りだったのに、北京五輪以降は大勢の観光客が押し寄せるようになりました。地下鉄6号線が開通し、2013年末には地下鉄8号線が南鑼鼓巷駅まで延びました。アクセスもよくなり、「ここまで観光客が来るようになるなんて!」と元留学生だった私でもびっくりでした。このあたりは「老北京(ラオベイジン)」と呼ばれる北京ッ子が住む住宅街です。住人たちも観光客が少し増えたぐらいまでは、ジュースやアイスを売る小さな商売の利益が増えると、喜んでいたかもしれません。それが、雑貨屋ぐらいしかできそうにない小さな店舗の家賃が、日本円で年間400万円を越えるようになるとは思っても見なかったでしょう。

夏は週末でなくても観光客だらけ。北京にやってきたおのぼりさんでいっぱい 夏は週末でなくても観光客だらけ。北京にやってきたおのぼりさんでいっぱい

南鑼鼓巷を観光する時の心得とは?

北京五輪以降、南鑼鼓巷の家の門に「謝絶参観」の貼り紙が目立つようになりました。四合院造りは、敷地内の庭をとり囲むように家屋が建っています。観光客が勝手に中に入り、庭や家屋の写真を撮りまくります。夜中までバーやカフェが営業しているので、騒々しい日も増えました。地上げ屋からの脅迫めいた電話もかかってくるようになりました。南鑼鼓巷のかつての静かな生活は、すっかり遠いものになってしまいました。住人たちは、引っ越したいけれど、北京の不動産価格は高すぎて他には引っ越せないという悩みを抱えています。せめて私たちは、ちょっとだけと勝手に門から入ったり、騒いだりするのはやめましょうね! 静かに観光願います!