四川省のチベット族自治州で見られる石積みの塔

観光客は私ひとりなのに、どうしてこんなに看板が立派なの? なんだかここが有名な観光地みたい。最近、完成したばかりに見える階段もあります。そう遠くない将来、ここが観光地化しそうな予感がします。私がいる場所は、中国の西南部、四川省マルカムにあるチベット族の塔の真ん前です。四川省の中でも北部は、チベット族が多く住む自治州になっています。マルカムは、アバチベット族チャン族自治州にあります。このあたりは、チベット族やチャン族が建てた「ディアオロウ」と呼ばれる石積みの塔があることで知られています。なかでも桃坪のディアオロウは、成都から日帰りツアーがでるほど人気があります。

北側の村に立つディアオロウ。ここからさらに山に入っていく道沿いにもディアオロウが見える 北側の村に立つディアオロウ。ここからさらに山に入っていく道沿いにもディアオロウが見える

観光地化されていない松崗直波村

桃坪のディアオロウは、2008年の四川大地震の震源地、ブン川からわずか10数キロの場所にあります。この塔は、あの大地震の際に倒壊してしまいました。現在、建っているのは、その後、新しく建てられたものです。残念ながら、周辺を整備しすぎてテーマパークみたいになってしまいました。私が見に行ったのは、マルカム郊外にある松崗直波村のディアオロウです。桃坪と比べると松崗直波村は、無名ですが、四川大地震でも倒壊しなかった3つのディアオロウが立っています。マルカムの標高は、2650メートルです。高地特有の深い青色の空をバックに立つディアオロウは、感動ものの美しさ! こんな景色をひとり占めできるなんて、本当に来てよかった!

200年以上の歴史がある3つのディアオロウ

松崗直波村は、マルカムから西に約17キロの国道317号線沿いにあります。国道を挟んで南北に分かれ、北側の山上には、2つのディアオロウが立っています。高さ31メートルと28メートルのディアオロウは、穀物倉庫にも見えますが、やはり見張り台です。南側の村には、めずらしい八角形のディアオロウがあります。こちらは、高さ43メートル。3つのディアオロウは、清朝の乾隆年間(1736〜1795)に建てられたと言われており、優に200年以上の歴史があります。どうやってここまで精巧な石積みの塔を建てたのか、どんな風に活用されたのか、想像が膨らみます。

漂ってくる観光地化しそうな予感

八角形のディアオロウの持ち主は、チベット族の「土司(トゥースー)」です。土司とは地主のことです。松崗の最後の土司である蘇希聖(スーシーション)氏は、1950年代の終わり、共産主義に反対してチベットからインドに亡命し、後にカナダに渡ったと言われています。その後、改革開放が始まり、再び松崗に戻ったとも。こんな歴史的背景を持つディアオロウは、外観だけでなく、観光資源になる価値は十分あります。観光利用して村おこしに役立てようと思っている人たちが大勢いそうです。2016年の3月現在、まだ、観光地化は進んでいません。観光客も少なく、3つのディアオロウが立つ村の風景をひとり占めできるのも、いまのうちかもしれませんよ!