ふたつと同じものがない中国の塔

北京の北海公園にあるチベット式の白塔、西安にある三蔵法師がインドから持ち帰った経典や仏像を保管していた大雁塔、現存する最古の木塔と言われる山西省応県の仏宮寺の釈迦塔。どの塔も見た目が全然違います。建てられた時代や場所が違うとは言え、中国の塔は、本当にバラエティに富んでいます。同じものがないと言ってもいいぐらい。もともと塔とは、お釈迦様の遺骨である舎利を供養するための建物です。そのため塔のほとんどが仏塔であり、舎利を納めた塔そのものがいつのまにか信仰の対象になっています。しかし、中国には「これって、仏塔なんだろうか?」と思ってしまうような塔もあちこちに残っています。

陝西省西安の大雁塔 陝西省西安の大雁塔

ちょっと珍しい場所に建っている塔

西安の大雁塔のように表面がつるんと何も彫られていない塔もありますが、仏像が彫られているものが数多くあります。さすがに表面に仏像が彫られていると、誰もが仏塔だと思います。お寺の境内の中にある塔も仏塔です。でも、四川省や山西省の古鎮では、「なんでこんなところにあるのかな?」と言う不思議な塔に出会うことがあります。塔がある場所や塔に描かれている図柄も仏教とは関係が無さそう。例えば、四川省成都に近い街子古鎮の字庫塔。字庫塔は、古鎮の広場に建っています。しかも塔の外壁に描かれている図柄は、「白蛇伝」という昔話。周囲にお寺もなし。ちょっと珍しい塔です。

街子古鎮の広場の角に建っているのが字庫塔 街子古鎮の広場の角に建っているのが字庫塔

「惜字是福」と言う考え方

清朝の道光年間に建設された字庫塔は、紙、それも文字が書かれた紙を燃やすために建てられた塔です。「惜字是福」と言う考え方があります。当時の人々は、文字が書かれた紙を適当に捨てることは、道徳に欠けることだと思っていたようです。誰もが字が読める時代ではなかったので、大切な事、ありがたい事が書かれている紙を粗末にするなんて、とんでもないことでした。そのため、文字が書かれた紙を集めて燃やす塔を作りました。それが街子古鎮の字庫塔です。街子古鎮から4キロ離れたところにある元通古鎮にも同じ役割の塔があります。こちらは塔ではなく、惜字宮と言う名前になっていますが、外観は宮と言うより塔です。

陝西省韓城の党家村の文星閣。名前は閣となっているが風水塔 陝西省韓城の党家村の文星閣。名前は閣となっているが風水塔

科挙の合格者を出すためにしたこと

その他の目的で建てられた塔も中国各地に残っています。この塔もどう見ても仏塔ではありません。建っているのは、村の入り口など。これは風水塔です。文昌塔や文峰塔とも呼ばれ、中国人が信じている風水の教えに基づいて建てられています。科挙の合格者を村や一族から出すことは、村と一族の繁栄につながります。科挙の合格者が出ない時など、風水師に方角を見てもらい、文運が上がるように塔を建てました。中国には、いろいろな役割がある塔が残っています。バラエティに富んだ仏塔以外の塔もおもしろいです。建設された時代、場所、用途によって異なる中国の塔は、どれだけ見てもあきません。中国で塔めぐりをしてみませんか!

浙江省建徳の新葉村にある文峰塔 浙江省建徳の新葉村にある文峰塔