あっさり味のはずが、超こってり味?

うわあ、油たっぷり! 思わず「これが、あっさり?」と言いそうになりました。麺を注文する時、「海椒(ハイジャオ)を少なめにしてね」と言うと、「じゃ、入れないわ。もともとが辛いから。海椒を入れない、清淡(チンタン)な味のほうがおいしいのよ」と、お店の人は、確かに言ったのです。海椒とは、唐辛子のことで、中国西南部の四川省や重慶では、海椒と呼ぶほうが一般的です。「清淡」とは、あっさり淡白な味付けのことを言います。それなのに出てきたのは、油の中に麺が入っているような超こってり麺でした。

麺の下にはさらに牛肉の塊が2つ、合計4つ入り。海椒なしでもこの色! 他のお客のスープは、海椒たっぷりなので、真っ赤なスープ 麺の下にはさらに牛肉の塊が2つ、合計4つ入り。海椒なしでもこの色! 他のお客のスープは、海椒たっぷりなので、真っ赤なスープ

四川省と重慶の料理の特徴とは?

私が行ったのは、重慶市にある「眼鏡麺(イエンジンミェン)」と呼ばれる麺館です。重慶は、中国の西南部にある、約2800万人以上の人口を抱える大都市です。もともとは四川省に属していましたが、97年に四川省から独立し、直轄市になりました。四川料理の特徴と言えば、花椒の刺激的な辛さとたっぷり入った油につきます。眼鏡麺の看板麺と言われる牛肉麺の表面にも辛そうなラー油の層ができています。この分厚い油では、日本人はもちろん、広東省などの薄味を好む地方の中国人もあっさりとは思わないのでは?眼鏡麺の牛肉麺はとにかくこってりです。

約20年前にできた「眼鏡麺」とは?

眼鏡麺は、重慶市の中心部、兪中区の「十八梯」からわずか5分ほどの場所にあります。十八梯とは、昔の重慶の街並みがわずかながら残っており、本来の重慶らしさを感じられると言われている場所です。90年代の終わりに十八梯のそばの解放西路にオープンしたのが眼鏡麺です。当時、重慶の麺は1杯3元が相場でした。しかし眼鏡麺の牛肉麺は6元。所得が低い人たちが多く住む地区といわれるところでの新規店とは思えません。それでも、こってり重い麺と牛肉の塊がゴロンゴロン入った牛肉麺は評判を呼び、十八梯の人気麺の域を越え、重慶を代表すると言っても過言ではない麺になりました。

十八梯のそばにある眼鏡麺の本店。眼鏡麺以降、重慶には「眼鏡牛肉麺」、「眼鏡麺館」など、名前に眼鏡がつく店が多い 十八梯のそばにある眼鏡麺の本店。眼鏡麺以降、重慶には「眼鏡牛肉麺」、「眼鏡麺館」など、名前に眼鏡がつく店が多い

眼鏡麺ならではの牛肉麺

2017年の3月、初めて眼鏡麺の牛肉麺を注文した時、その値段にびっくりしました。28元(約476円)! 私が中国で食べた麺の中で一番高い! 中国では牛肉麺と言えば、内陸部の蘭州のものが有名です。その透明の牛骨スープに入った蘭州の牛肉麺と言えば、牛肉はほんのちょっぴり。肉を追加注文するとたっぷり入れてくれますが、ふつうは「牛肉麺」と言えば、肉はほとんど入っていません。この眼鏡麺の牛肉麺のように、牛肉の塊がゴロンゴロン入っている麺は本当に珍しいのです。しかも吸い付くように、もったり重い麺がおいしい。眼鏡麺でしか食べられない牛肉麺だから、相場の倍しても食べたい人がやってくるんですね。麺好きなら、重慶ではぜひ眼鏡麺の牛肉麺をお試しを! 衝撃の重さは、食べてみる価値ありですよ!

甘粛省蘭州名物の牛肉麺。中国では牛肉麺と言えば、蘭州のものをイメージする人が多い 甘粛省蘭州名物の牛肉麺。中国では牛肉麺と言えば、蘭州のものをイメージする人が多い