その時でしか見られない旬を代表する「花」

この記事が掲載される頃は、日本では桜の花も散って、春の花が咲き乱れている頃でしょうか。それとも、初夏の爽やかな緑が野山を覆っている頃でしょうか。海外観光には、遺跡や名所旧跡のように人が造ったものを見たり、グランドキャニオンのような大自然の造形美を見たりといった、そこに行けばいつでも見られるものもありますが、その季節でなければ見られないものもあります。「花」はその代表的なものでしょう。通常、その植物の花が咲くのは年1回ですから。今回はそうした海外で見る花の中から、春の花のイメージが強い「菜の花」を紹介します。

貴州省でバスの車窓から見た、菜の花畑 貴州省でバスの車窓から見た、菜の花畑

移動中に偶然見た、中国西南部の菜の花畑

今から20年ほど前の3月下旬、私は中国南部の貴州省を旅していました。その頃はインターネットも発達していない時代ということもあり、私は貴州についての予備知識はガイドブック以外、ほとんどありませんでした。なので行っても、せいぜいそこに住む少数民族のミャオ族の市場が見たいというぐらい。そこで着いてみた現地で、黄果樹の滝が有名な観光地ということを知り、そこへ行く現地発ツアーに参加。滝も良かったのですが、バス移動中に見た風景が今でも忘れられないくらいとても印象的でした。平原一面に黄色い菜の花が咲き乱れ、その中に、石灰岩が造った岩山がポツポツとそそり立っていたのです。

黄色い菜の花が咲く平原に石灰岩の岩山がそそり立つ

中国で石灰岩の岩山が続くカルスト地形というと、広西チワン族自治区にある桂林が有名です。貴州省のカルスト地形も川こそないものの、見た目は似ていました。しかし地平線まで続くような黄色い花の絨毯は、桂林にはありません。予想もしなかったその風景に私は驚き、バスの車窓から食い入るように見ていたのですが、他の乗客たちは関心がなさそうでした。地元の人たちにとっては、毎年のことで、特に「すごい」という感じではないのでしょう(笑)

現在では、中国の人気観光地のひとつに

20年前には、日本のガイドブックでも注目されていなかった中国西南部の菜の花畑ですが、現在では中国人観光客の間でも有名な観光名所となっています。もちろん菜の花は観光用に植えられたものではなく、菜種油をとるためのもの。要はただの畑なのですが、そのスケール感がすごくて、一斉に開花すると現実の世界とは思えないほどなのです。菜の花畑は中国各地にありますが、一番多いのは貴州省のお隣の雲南省で、中国全体の1/4の菜種を生産しています。(後編に続く)