一度聞いたら忘れられない名前の朝ごはん

「豆腐脳(トウフナオ)」は、あの広大な中国の東西南北どこに行っても食べられる伝統的な朝ごはんのひとつです。一度聞いたら忘れられない名前でもあり、しかも豆腐で作っているので、日本人ファンも多い食べ物です。ふわっと軟らかい豆腐にお醤油味のスープをかけた豆腐脳は、「油条(ヨウティアオ)」や「油餅(ヨウビン)」と呼ばれる揚げパンと相性が良く、どこで食べても美味しい。中国の検索サイト「百度」で調べてみると、「天津の伝統的な点心」と紹介されていますが、この答えに納得がいかない中国人は、山ほどいるはずです。それぐらい豆腐脳は全国区の食べ物です。

上海で食べた豆腐脳。干しエビ入りの豆腐脳は上海だけ! 上海で食べた豆腐脳。干しエビ入りの豆腐脳は上海だけ!

中国で豆腐を発明したと伝えられている人物

中国では豆腐を発明したのは、前漢を興した劉邦の孫である淮南王の劉安だとされています。劉安は、紀元前179年から紀元前122年まで生きた人物で、漢の武帝の頃に活躍したとされています。淮南は、上海に近い安徽省中央部にある市で、淮南駅前には劉安の像が立っています。淮南の八公山が豆腐発祥の地とされ、豆腐博物館もあるのですが、訪れる人が少ないのか寂れ感が漂うところになっています。安徽省生まれの豆腐で作った豆腐脳がどういう道を経て、天津の名物と紹介されるに至ったのかは謎なのですが、豆腐脳は、中国全土で食べられる国民的朝ごはんになりました。

甘い北京の豆腐脳は、みたらしだんごのタレに似た味のスープで食べます 甘い北京の豆腐脳は、みたらしだんごのタレに似た味のスープで食べます

全国区だから、どこで食べてもその土地の味

あまりにも広範囲に広まっているので、豆腐脳は、地方によってかなり味付けに差があります。上海の豆腐脳は、干しエビと海苔が入ったあっさり味です。「油溌辣子(ヨウポーラーズ)」と呼ばれる辣油を好んで食べる内陸部の西安では、豆腐脳にもたっぷりと油溌辣子を入れて食べます。西北部の豆腐脳は、だいたい西安と同じ辣油をきかせた味付けになっています。北京のものは、ちょっと珍しい味付けです。もともと北京とその周辺はしょっぱい味を好む地方ですが、どういうわけか豆腐脳は、とろりと甘いお醤油味です。

西安をはじめ西北部一帯に広まる豆腐脳には、辣油がよくあいます 西安をはじめ西北部一帯に広まる豆腐脳には、辣油がよくあいます

楽山市で食べられる本当に珍しい豆腐脳

2016年の10月、四川省の楽山で今まで食べたどの地方のものとも異なる豆腐脳を食べました。楽山は、省都成都からバスで約2時間、世界遺産の楽山大仏がある地方都市です。ここの豆腐脳は、春雨入り! 素と言われる肉なしと鶏肉、牛肉入りの3種類あります。小さくほぐした鶏肉と春雨入りの豆腐脳には、片栗粉が入っているのでとろっとろっ。味付けは、四川省らしくかなり辛いです。楽山市の名物朝ごはんのひとつですが、春雨がたっぷり入っている上に、とろみスープなのでとにかく腹にきます! 朝ごはんというよりも昼ごはんのほうがいいんじゃない? 本当に豆腐脳は、どこで食べても美味しい朝ごはんです。もし、豆腐脳をまだ食べていないという人は、次回は、ぜひ、食べてみてくださいね!

豆腐よりも春雨の存在感が際立っている楽山の豆腐脳! 豆腐よりも春雨の存在感が際立っている楽山の豆腐脳!