楽山で13年ぶりに再会した豆腐料理

鍋に入った豆腐の下をおたまでほじくると、豚肉、れんこん、ジャガイモ、カリフラワー、春雨などが出てくる、出てくる。宝探しのような感覚でおもしろくて、相変わらずおいしい! 13年ぶりの楽山での再会に感動! これは、私が四川省の成都に留学していた頃、大好きだった豆腐鍋です。中国の西南部に位置する四川省と言えば、麻婆豆腐や火鍋など、とにかく辛い料理で有名です。山がちな土地で夏もじんわりと暑く汗がでにくい地方だけに、新陳代謝を良くするために辛い料理が生まれたと言われています。こんな四川省で有名な鍋料理と言えば、火鍋です。「串串香(チュアンチュアンシャン)」と言う串にさした具を入れて食べる火鍋も有名です。

四川省生まれの串串香は、中国全土で食べられる人気料理。写真は辛いスープとあっさりスープの2種類の味を楽しめる鴛鴦鍋 四川省生まれの串串香は、中国全土で食べられる人気料理。写真は辛いスープとあっさりスープの2種類の味を楽しめる鴛鴦鍋

とにかく豆腐をよく食べる四川省

野菜や肉を1本1本串にさし、1本ずつ好きな具を選んで食べる串串香は、今や中国全土に広がっている人気の鍋料理ですが、実は歴史は浅いんですよ。成都市内南部の玉林地区で生まれたので「玉林串串香」とも呼ばれている串串香は、成都の南に位置する楽山市が発祥の地という説もあります。発祥の地がどちらにせよ80年代半ばに現れた新しい料理です。四川省は、とにかく豆腐をよく食べる地方です。北部を除いて中部南部ともによく食べます。中部から南部の町ならどこに行っても豆腐とごはんを一緒に食べる豆花飯の食堂があるぐらいです。そのため串串香が登場するまで四川省で鍋と言えば、火鍋か豆腐鍋だったそうです。

四川省の国民食と言える豆花飯。地方によって豆腐に灰色がかっていたり、生地が粗かったりと違いがある。タレの配合も地方ごとに特色があっておもしろい 四川省の国民食と言える豆花飯。地方によって豆腐に灰色がかっていたり、生地が粗かったりと違いがある。タレの配合も地方ごとに特色があっておもしろい

「葷豆花(フントーホア)」とはいったい、どんな料理?

私が大好きだった豆腐鍋は「葷豆花」と言います。「葷」とは、肉や魚をさします。肉や魚が入った豆腐鍋が葷豆花です。もちろん白菜、じゃがいも、冬瓜などの野菜もたっぷり入っています。葷豆花を注文すると、豚肉、野菜、豆腐がたっぷり入った鍋が出てきます。何がすばらしいって、おいしい上に豆腐のおかわりは無料! 肉や野菜の追加は、もちろん有料ですが、最初からけっこうな量が入っているので、女性同士なら追加しなくても十分です。味付けは、四川省なのに全然、辛くないんです。タレは四川省らしく唐辛子とラー油がベースの激辛ですが、これは自分で調整オッケー。動物性のスープで食べる豆腐鍋はあっさり、具だくさんで美味しく、しかも安い! 最高の鍋料理でした。

写真は1~2人用葷豆腐。物価が安い楽山市ではこれが20元(約320円)。 写真は1~2人用葷豆腐。物価が安い楽山市ではこれが20元(約320円)。

葷豆花が串串香に負けてしまった理由

しかし、私が留学していた頃には、既に少なくなっていた葷豆花のお店は、その後、本当に消えてしまいました。串串香の野菜の串は1本0.5〜1元(約8〜16円)、鶏肉やソーセージなどは1本2元(約32円)ぐらいです。野菜も肉も全て有料です。しかも注文した際、鍋に入っているのはスープのみです。最初から豆腐や具でいっぱいの鍋がでてくる葷豆花とは違い、全て有料の串串香は、お店側からすれば儲かります。あっという間に成都のような家賃が高い大都市では、葷豆花のお店は、串串香にとって代わられてしまいました。その葷豆花のお店が、楽山市の楽山港に近い市場周辺に集まっていました。まさかこんなところで再会できるなんて! 葷豆花、楽山市で見つけたら、ぜひ、ご賞味あれ!

世界遺産の「楽山大仏」を見に行った時には、葷豆花をぜひ、食べてほしい。市内中心部の陽光広場に近い人民西路にも葷豆花のお店が集まっている 世界遺産の「楽山大仏」を見に行った時には、葷豆花をぜひ、食べてほしい。市内中心部の陽光広場に近い人民西路にも葷豆花のお店が集まっている