河南省洛陽名物の「漿麺条」と陝西省の「漿水麺」

とろっと酸っぱいスープともちっとした食感の麺が相性ばっちり。酸味がきいたスープは、白濁しているのではなく、正真正銘の白と言おうか生成り色。スープの正体は、緑豆を加えて作った豆乳です。発酵した豆乳なので、酸っぱいのです。これは、河南省の洛陽名物の「漿麺条(ジャンミェンティアオ)」です。河南省の隣の陝西省にも「漿水麺(ジャンシュイミェン)」と呼ばれる酸っぱいスープに入った麺があります。漿水麺が、食欲が落ちる夏に食べる麺なので、漿麺条も夏向きの麺だと思っていたら、違うんですね。洛陽人は、漿麺条好きで、1年中食べるそうです。

奨麺条の具は、くたくたに煮た青菜、緑豆、ピーナッツなど 奨麺条の具は、くたくたに煮た青菜、緑豆、ピーナッツなど

漿麺条の始まりは、いったいいつ?

漿麺条の起源には、いくつか説があります。明代、後漢、清朝末期など、時期にかなりのばらつき有り。私が好きなのは、後漢と清朝末期説です。後漢の光武帝劉秀が前漢の簒奪者、王莽の追っ手から逃げ回っていた時、貧しい農民の家に逃げ込みました。あまりにもおなかがすいていたので、「なんでもいいから」と言って食べさせてもらいました。それが漿麺条です。劉秀は、皇帝になった後も漿麺条の味を忘れなかったという説。清朝末期説は、洛陽の貧しい農民が、古くなった豆乳を捨てるのがもったいなくて、葉野菜をいれて食べたら、おいしかったという説です。当時、貧しい家庭では、麺の代用に野菜を入れるのは、よくある話だそうです。どちらの説でも漿麺条は、貧しい農民の家から生まれます。確かに漿麺条は、華がないと言おうか、地味な麺です。

韓国の「コングクス」との違い

中国では、洛陽以外で豆乳に入った麺を食べたことはないのですが、韓国には、伝統的な豆乳麺があります。「コングクス」と呼ばれ、冷たい豆乳に入った夏限定の麺です。ただし、コングクスには、発酵していない豆乳を使うので、酸味は全くありません。どろりと濃厚な豆乳は、ビシソワーズと呼ばれるじゃがいもの冷たいスープに似ています。コングクスは夏バテしないように食べる麺ですが、年間を通して食べる漿麺条では、夏バテ防止とは関係ありません。中国では緑豆は、胃に効く食材として知られています。緑豆入りの豆乳を使った漿麺条は、家計にやさしく、おいしくて、胃の働きをよくする麺です。

冷たい豆乳で食べるコングクスは具なし。キムチを豆乳スープに入れて食べる 冷たい豆乳で食べるコングクスは具なし。キムチを豆乳スープに入れて食べる

奨麺条に欠かせない韮花醤とは?

2017年10月の洛陽滞在中、旧市街で漿麺条を食べていると、相席の男性が緑色のペーストが入った小皿をくれました。その男性が食べていたのも漿麺条です。「これを入れると、もっとおいしい」と渡されたものは、韮の花のペーストに塩と花椒を加えた韮花醤です。入れた量が少なかったのか、味にあまり変化はなかったのですが、韮花醤には、食欲が増したり、胃の働きを良くする働きがあります。洛陽では、漿麺条を食べる時に、韮花醤は欠かせない調味料のようです。河南省洛陽に世界遺産の「龍門石窟」を見に行ったら、漿麺条もお忘れなく! 老城区と呼ばれる旧市街には、漿麺条を出す食堂が集まっているので、すぐ見つかりますよ!

洛陽の旧市街は、(写真奥に見える)麗景門から入って東側の地区。洛陽名物が食べられる食堂が集まっている 洛陽の旧市街は、(写真奥に見える)麗景門から入って東側の地区。洛陽名物が食べられる食堂が集まっている