- 浜井幸子
- 京都在住の神戸人。19歳の時、人生初の海外旅行で中国に行き、何が飛び出してくるかわからない中国の魅力にはまる。その後、成都と北京に語学留学し、現在は主に中国の食と旅をテーマに執筆活動中。中国の粉もの文化を中心としたアジアの食が得意分野。著書に「シルクロードおもしろ商人スクラップ」、「中国まんぷくスクラップ」などがある。
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辣油たっぷりの豆腐湯。豆腐はしっかり固めの木綿豆腐。生姜もきいており、シャープでスパイシーな味わい
中国の河南省の古都、洛陽に行った時は、春でも夏でも、朝ごはんは「豆腐湯(トウフタン)」と決めています。中国語で「湯(タン)」はスープのことです。豆腐湯は、その名前の通り、豆腐のスープです。名物の豆腐湯を食べると、洛陽での私の1日が始まります。さて、洛陽は、別名「湯都」と呼ぶ人もいるほど、スープのバラエティが富んでいます。その名物スープのほとんどが朝ごはんです。洛陽は、かつて中原と呼ばれた中華文明発祥の地。後漢、三国の魏、西晋などの都があった洛陽ですが、今ではすっかり地方都市の一つと言ったたたずまいになっています。でも、かつての都だったところは、今も脈々と美食の文化が受け継がれています。西安、南京、開封は、今でもごはんが美味しいところです。洛陽も何を食べても美味しいところですが、朝ごはんが突出して、美味しい都市です。
洛陽の胡辣湯。豆腐皮(薄く、乾燥した豆腐。湯葉に似ている)、きくらげなどが入っている。野菜と豆腐だけのものと肉入りの2種類
洛陽の朝ごはんスープを代表する豆腐湯には、固めの豆腐、厚揚げ、春雨などがたっぷり。スープの表面には、赤い油の膜がはっています。この油が美味しさの理由のひとつ。スープも牛骨など、肉は一切使っていないのに、深みのある味がします。この味を作っているのは、油と生姜などのスパイス類です。どの季節に食べても美味しいですが、生姜がきいた豆腐湯のベストシーズンは、やはり冬。日本よりもずっと乾燥しているので寒い河南省の冬には、しょうがと油で体が芯からあったまる豆腐湯がぴったり。生姜の刺激で体が目覚め、スープの表面を覆う油で体があったまった状態で保たれます。「羊肉湯(ヤンロウタン)」も洛陽名物ですが、羊の肉は、体を温める作用があるため、夏には「上火」と言って、のぼせやすくなるので、夏は食べる人が減ると言われています。全身があったまる冬こそおすすめです。
果子油茶は、午後のおやつとしても人気。油茶は、西安、北京、桂林など中国各地にあるが、見た目の違いが非常に大きな食べ物
洛陽名物のスープを楽しみたいなら、老街と言われる旧市街に行ってみましょう。城壁のような麗景門をくぐると、そこが老街のメインストリートです。豆腐湯や不翻湯などの名物スープが食べられる食堂が並んでいます。最近は、食べられるお店がめっきり減ってしまいましたが、「果子油茶(グオズヨウチャ)」も朝ごはんの一つです。「果子(グオズ)」と言う小麦粉生地をカリカリに揚げたものの上にとろっとろっの油茶がかかっています。油茶は小麦粉、ピーナッツ、黒ゴマに油茶粉(油茶の素)と水を加えたものです。ほのかにしょっぱい油茶は、とろみがある分、冷めにくく、夏より冬に食べるほうが美味しい食べ物。サクサクカリカリの果子ととろとろの油茶はミスマッチ! 見た目もかわいく、この不思議な組み合わせに気づいた人を思わず尊敬したくなるような名物です。
窯に貼りつけて焼くタイプの餅。1枚1元(約16円)前後
洛陽の朝ごはんで忘れてはいけないのは、名物スープにも欠かせない「餅(ビン)」と呼ばれるパンです。インドのナン風のものから薄く伸ばした生地を渦巻き状に丸めたもの、四角いものなど、形はいろいろ。河南省は小麦粉を主食とする地方なので、餅もバラエティに富んでいます。1年を通して食べるものですが、乾燥して寒い冬のほうが熱々をほうばった時に感じる美味しさが増す気がします。小さくちぎった餅をスープに入れて食べても、片手に持った餅をスープにつけながら食べても美味しい。洛陽名物は、どれも冬にあうものばかり。新型コロナが落ち着いて、普通に旅ができる日が来たら、また、洛陽に行きたくなりました。湯気があがる豆腐湯や羊肉湯と一緒に熱々の餅を食べられる日が待ち遠しい!
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