どうしても鉄塔に登ってみたかった理由

「この塔の入場料が50元(約800円)、登るためにさらに30元(480円)は、高いわ」と、ブツブツ文句を言いながらも30元払って、登りました。この塔とは、河南省開封市にある「鉄塔(ティエター)」です。開封は、北宋時代(960〜1127年)の都だったところです。東京(トウケイ)とも呼ばれ、当時は世界最大級の都市でした。鉄塔は、城壁に囲まれた開封中心部の北東にある鉄塔公園の中にあります。入場料を払って、公園内に入らなくても十分見られます。それでも入ったのは、私が北方謙三氏の歴史小説「水滸伝」の愛読者だから。水滸伝にも鉄塔が出てきます。しかも大好きな登場人物が、この鉄塔に登るシーンもあります。ここまで来て登らないってのは、あり得ません。

少し傾いています。今、思えば、よく登らせてくれたものです。近い将来、登れなくなる可能性大! 少し傾いています。今、思えば、よく登らせてくれたものです。近い将来、登れなくなる可能性大!

登ってみないと、本当のことはわからない!

鉄塔は、高さ約55.8メートルの褐色のれんがが貼られた塔です。遠くから見ると、れんがの塔が鉄の塔のように見えるので、「鉄塔」と呼ばれています。中に入り、らせん階段を登って、最上階にたどり着くと、身長153センチの私ひとりがやっと座っていられるスペースしかありませんでした。「水滸伝」に書かれていた、塔の上階で男性二人が立つスペースがないことがわかりました。でもファンだから、これで充分満足なんです。それに登っておいて良かったです。鉄塔は宋代の1049年に建造されました。既に1000年近く経っています。中に入ってみると、壁や床はかなり傷みが目立ちます。いつ登れなくなっても、おかしくありません。

よく見ると、鉄塔には瑠璃色の煉瓦が使われています よく見ると、鉄塔には瑠璃色の煉瓦が使われています

山西省応県の木塔が、登れなくなった理由

北京の西側にある山西省の大同は、世界遺産の雲崗石窟で知られる都市です。大同市の南60キロにある応県の「木塔(ムーター)」は、雲崗石窟とあわせてまわる人も多い建造物です。高さ67.1メートルもある木造の塔は、元代の大地震の時もびくともしなかったと言われています。私が訪れた2006年頃は、9層ある塔の上まで登ることができましたが、2016年には、第2層までしか登れなくなりました。そりゃそうです。木塔が建造されたのは、1056年(遼の清寧2年)なので、もう960年以上がたっています。北京五輪以降、国内旅行をする中国人は、爆増しました。想定外に多い観光客が木造の塔に登ったら、ますます傷みます。最上階まで登れなくするほうが、当たり前です。

塔と城壁は、今後、登れなくなってくる可能性大!

今、中国では、塔だけでなく、城壁も入れなくなってきています。山西省の中部にある平遥は、1997年に世界遺産に認定された古城です。現存する城壁は、明代の建造された城壁を基礎に清代に修復されたものです。北京五輪前は、周囲約6キロにわたる城壁の上を自転車に乗って観光することができました。城壁の上をサイクリングするのは、平遥古城の目玉観光のようなもので、外国人旅行者に人気がありました。しかし、現在は自転車は禁止され、歩いて回ることだけが認められています。今後、塔や城壁は、保存するために、ますます登れなくなっていきそうです。観光地になっている塔や城壁は、登れる時に登っておくのが正解!

平遥古城の城壁。上部の幅は、3〜6メートル。周囲6キロの城壁は、サイクリーングコースにぴったりでした 平遥古城の城壁。上部の幅は、3〜6メートル。周囲6キロの城壁は、サイクリーングコースにぴったりでした