見ているだけで怖くなる「空にひっかかった」お寺

「こんな細いつっかい棒みたいな柱を使って、よくこんな怖い所にお寺を建てたなあ」。山の斜面と言うより山壁にへばりついた懸空寺を見ると、日本人と中国人の発想の違いを感じます。でも、この理解不能の中国的発想が中国の魅力のひとつ。「懸空寺(シュエンコンスー)」と言えば、北京の西側、山西省大同の懸空寺が有名です。世界遺産「雲崗石窟」を見に行ったついでに、大同市渾源県の懸空寺に行ったことがある日本人も多いはず。懸空寺はその名の通り、まさに「空に引っ懸かった」ようなお寺です。最近、中国の検索サイトで「懸空寺」を調べてみると、渾源県だけでなく、中国各地にあることがわかりました。

大同市渾源県の懸空寺。大同の大同バスターミナルから懸空寺行きのバスに乗り、終点下車 大同市渾源県の懸空寺。大同の大同バスターミナルから懸空寺行きのバスに乗り、終点下車

中国各地に残っている懸空寺

日本人にもよく知られている渾源県の懸空寺以外に浙江省、福建省、福建省、河南省など、あわせて13か所もありました。中国人って、本当に懸空寺が好きなんですね。中でも中国三大懸空寺と言われるのは、大同市渾源県、雲南省昆明市西山、河北省石家庄市蒼岩山のものです。私が行ったことがあるのは、渾源県と昆明市の2か所。渾源県の懸空寺は、今から約1400年前の北魏の末期に建てられました。仏教、道教、儒教が混じりあった独特の宗教の寺院としても知られています。そのため三教堂には、釈迦、老子、孔子の銅像が並んでいると言う、かなり変わった寺院です。

渾源県の懸空寺を横から見たところ。この細い柱でお寺を支えている 渾源県の懸空寺を横から見たところ。この細い柱でお寺を支えている

ちょっと物足りない? 雲南省昆明市の懸空寺

雲南省昆明市の懸空寺は、「三清閣」と呼ばれています。昆明市の中心部から約15キロ離れた西山にあります。元代(1271~1368)に建設され、雲南を治めた梁王の避暑地として使われたのが三清閣です。明代(1368~1644)に入ると、同教寺院となりました。付近には龍門石窟と呼ばれる道教の石窟がありますが、絶壁の上に建っています。この龍門から見渡せるテン(さんずいに眞)池の風景がすばらしい! ただ、懸空寺としての三清閣は、渾源県のものと比べると、いまいち物足りません。ぶらさがり感が足りない。山壁にぶら下がっているのではなく、細い山道にちゃんと建っているため安定感があるのです。

青海省西寧市の北山寺。こちらも懸空寺のひとつ 青海省西寧市の北山寺。こちらも懸空寺のひとつ

現実離れしているほどすごい! 河北省石家庄市にある懸空寺

今、私が行ってみたいのは、河北省石家荘市蒼岩山の懸空寺です。渾源県の懸空寺とは違う形でひっかかっています。山と山が向かい合わせになり、その間は深い谷です。この谷の真上、山と山にかけた橋がお寺がなっています。この部分は橋楼殿と呼ばれ、唐代(618~907)に建てられたものです。中国映画好きなら、橋楼殿を見たことがあるかもしれません。2000年に公開された映画「グリーンディスティニー(原題、臥虎蔵龍)」でチャン・ツィイー扮する玉橋龍が身を投げるラストシーンで登場するお寺です。一見、現実離れしたあの建物は、実際にあったんですね! 懸空寺は、見ているだけでドキドキするような不安定さが魅力のお寺です。中国に行ったら、懸空寺を見に行ってみませんか!