大気汚染を解消するための政策と肉夾モーとの関係

2017年12月、日本のニュースでも中国の燃料事情について、たびたび報道していました。子供たちが運動場で勉強している、青空教室の様子です。中国政府は、深刻な大気汚染を解消するために、石炭燃料から天然ガスや電気への転換を強力に推し進めています。河北省の小学校では石炭ストーブを撤去したものの、代替の設備が間に合いませんでした。それで寒い室内よりも太陽が照っている屋外での授業になった訳です。12月ともなると昼間でも気温が0度ぐらいしかない場所なので、晴れていても青空教室は、寒そう。このニュースが西安の名物料理にも関係していたとは思いもよりませんでした。中国人だけでなく、外国人旅行者にも人気がある「肉夾(ロージャー)モー(食へんに莫)」が、もう食べられなくなるかもしれないそうなのです。

肉夾モーは、注文する時に「痩肉」を選ぶと赤身の肉が中心。「肥肉」なら、ばら肉のことなので脂身が多い 肉夾モーは、注文する時に「痩肉」を選ぶと赤身の肉が中心。「肥肉」なら、ばら肉のことなので脂身が多い

西安を代表する名物料理「肉夾モー」

陝西省の古都西安は、中国屈指のB級グルメが美味しい町です。羊のくず肉とモーと呼ばれる素焼きのパンをちぎったものを牛骨スープで煮た「羊肉泡モー(食へんに莫)」、ゴマダレうどんにそっくりな「麻醤涼皮(マージャンリャンピー)」、西安名物のラー油で食べる「油溌麺(ヨウポーミェン)」などなど。数多くの名物料理の中でも、とびきりメジャーなのは「肉夾モー」です。酒、しょうゆ、八角、桂皮、花椒などでトロトロッに煮込んだ豚バラ肉を細かく刻んで、モーと呼ばれる素焼きのパンに挟んで食べます。豚バラ煮込みが美味しいのは当然として、モーとの相性が抜群にいいのです。私も大好きな肉夾モーですが、今、本当に美味しい肉夾モーが食べられなくなったと言う人まで現れています。

西安の顔と言ってもいいほど有名な「羊肉泡モー」。モーは、小さくちぎれば、ちぎるほど美味しいと言われている 西安の顔と言ってもいいほど有名な「羊肉泡モー」。モーは、小さくちぎれば、ちぎるほど美味しいと言われている

回民街の屋台事情が変わった理由

2017年秋に西安を訪れた時、西安最大の美食街「回民街」の屋台のご主人たちが「商売ができなくなった」と嘆いていました。この人たちは、炭火を使って、調理する人たちです。熱源を電気に変えて、営業を続けている人もいますが、「もう年だし、炭火でないと本来の味を出せないから」と言って、引退してしまう人もいます。肉夾モーの場合、具の豚ばら肉の煮込みは、あらかじめ家で作れます。その後は、炊飯器に入れて保温するなどの工夫は以前から見られました。こちらは、なんとかなりそうですが、問題は、素焼きのパンであるモーです。

西安の名物お菓子の一つ「鏡ガオ」。米粉を小さな蒸籠で一つ一つ蒸して作る。石炭でないと美味しく作れないそう 西安の名物お菓子の一つ「鏡ガオ」。米粉を小さな蒸籠で一つ一つ蒸して作る。石炭でないと美味しく作れないそう

モーは、西安では主食のひとつ

モーは、肉夾モーに使われるだけでなく、粉ものと主食とする西安では主食のひとつです。毎日、気に入っているお店で買う人たちがいます。回民街には、モーを売る小さなお店が多く、こんなモー専門店や肉夾モーのお店では、炭火焼きにこだわっているところがあるのです。「樊記」や「潼関肉夾モー」などの有名店では、以前から電気釜で大量に焼いています。「(熱源が変っても)大差ない」の声もありますが、炭火焼きのモーで作る肉夾モーがなくなるかもしれないのは、なんとも寂しい。なんとか炭火焼きのモーが残る道はないのでしょうか!

モーは、西安人の主食のひとつ。味はないから、どんな料理にもあう モーは、西安人の主食のひとつ。味はないから、どんな料理にもあう