香港のシナゴーグってどこだろう

コスモポリスである香港には、世界のさまざまな宗教関連施設も建てられています。私は特定の宗教に帰依していませんが、旅に出て宗教を感じられる場所へ行くのは好きです。先人の知恵、芸術性、静寂さあるいはその反対の熱気、その土地との結びつき……宗教施設を訪れることで、旅が多面的な魅力を帯びてくるからです。「では香港に、ユダヤ教のシナゴーグ(会堂)はあるのか?」南インドで初めてシナゴーグの中に入ってその美しさに打たれた私は、機会があればいろいろな国でシナゴーグを探すことにしています。今回は、香港シナゴーグ探しのエピソードと、それを通じての私の苦い体験などをご紹介します。

行きたいことに理由は必要?香港、ユダヤ教の会堂「シナゴーグ」見学にトライ(その1) 行きたいことに理由は必要?香港、ユダヤ教の会堂「シナゴーグ」見学にトライ(その1)

足を踏み入れるのも初めての高級住宅街へ

地図上では、たやすくシナゴーグは見つかりました。九龍半島にも香港島にもあったので、宿泊先に近かった香港島のほうの「猶太教堂(オーヘル・レア・シナゴーグ)」に行ってみることにしました。中環の動く歩道「ヒルサイド・エスカレーター」で坂道をずっと登り、ソーホーの外れでエスカレーターを降りてからもミッドレベル(半山區)を徒歩で登って行きます。こんなに坂道を登ってばかりとは予想していなかったため、クタクタに疲れてしまいました。標高が上がるにつれ、ソーホーの喧噪とは別世界の静かで落ち着いた高級住宅街に入っていきます。人通りもほとんどありません。時折すれちがうのは、毛並みの立派な犬の散歩をする人だけ。身なりからして、お金持ちの家の散歩代行アルバイトのようです。夜だったためもあり、だんだん心細くなってきました。

気分はすでに行き倒れ寸前の旅人!

夜道の先にやっと見つけたシナゴーグは、閑静な住宅地にしっくりとなじんでいてすてきなムードの建物でした。あたたかそうな灯りが窓から漏れていて、それを見ていると、遠く苦しい旅の果てにここまでたどり着いた行き倒れ寸前の旅人のような気分になってきます。自分の妄想癖に呆れながら疲れも忘れて足早に近づいて行きましたが、門が厳しく閉ざされていて、入り口まで行くことができないのです。周囲を一周してみても、敷地内へ入ることができません。せっかく苦労してここまで来たのだから中に入りたいという執念だけで、なおもぐるぐると回っているうちに、「隣に建つ高層ビルから、シナゴーグのある敷地内へ通じているのかもしれない」とひらめきました。

隣のビルの警備員室でトライしてみるも……

隣のビルには立派な車寄せがあり、ガードマンが何人も常駐しています。玄関に入っていく人間の様子をチェックするだけでなく、金属探知機までくぐらせています。「ふつうのビルにしては警戒が厳重すぎる。ユダヤ人に関係があるのでは?」と感じたのです。不審に思いながらもできるだけ無邪気な旅行者を装って(無邪気な旅行者なのですが)、警備員室へ行ってみました。「あのう、この隣のシナゴーグを見学したいんです。門が開いていないのですが、こちらのビルの側から、入り口はありませんか?」と笑顔で尋ねてみました。すぐに通してくれるとばかり思っていたのは大間違いで、若いガードマンは、紳士的な態度ながら、「それはできません。」と告げるのでした。(その2へつづく)