開発のため、古いものをどんどん壊してきた香港ですが……

香港は行くたびに風景が変わっている、忙しい町です。ホテルもレストランもショップも、どんどん建ってはどんどん潰れたり移転したり拡張したり。そんな町では、昔ながらの建築物を見かけると、それだけでなんとなくホッとします。初めて香港に来た時、自然と目が吸い寄せられたものがありました。尖沙咀(チムサーチョイ)側のスターフェリー乗り場のすぐ前に立つ、「前九広鉄路鐘楼(尖沙咀鐘楼、クロックタワー)」です。

右側には南国らしくヤシの木。左側にあるのは香港文化中心の建物。 右側には南国らしくヤシの木。左側にあるのは香港文化中心の建物。

イギリス統治時代から現在までの、時を刻む時計台

赤レンガと花崗岩で作られたこの優美な時計台は、香港の鉄道の歴史とともにあります。「九広鉄路」の「九」は「九龍」、「広」は中国の「広州」を意味し、1916年にこの二つを結ぶ鉄道が完成しました。九龍側の駅は、この時計台の場所にありました。時計台は鐘楼として作られましたが、銅鐘は現在では時計台の地下に保管されています。1975年に、九龍駅がホンハム地区へ移転しました。駅舎は文化資産としての価値の高い建築でしたが、壊されてしまいます。時計台だけが取り壊しを免れ、現在も往時の姿をとどめているのです。

「法定古蹟」であることが説明されているプレート 「法定古蹟」であることが説明されているプレート

昔から、ウォーターフロントのシンボル的存在でした

ウォーターフロントの開発はその後とどまることを知らず、今では香港文化中心、香港太空館、香港芸術館といった大きな建物に埋もれるようにして、ぽつんと立っています。時計台は高さ44メートルで、その上に7メートルの避雷針がついています。高い建物のなかった昔には、さぞ立派に見えたと思います。活気があったであろう旧・九龍駅で、このイギリス風建築を人々が見上げていたのでしょうね。今では海沿いを散歩する人々が、フォトジェニックな被写体として、かわるがわる撮影していきます。

この日は週末で、ちょうど警察犬のショーをやっていました この日は週末で、ちょうど警察犬のショーをやっていました

いつまでも現役の時計台であってほしいものです

私は、香港島側から対岸のチムサーチョイを見渡す時、いつもこの時計台を目で探すのが癖です。香港島から見ると、時計台は心細いほどにちっぽけです。しかし、遠くからでも、周囲の新しい建物とは一線を画す気品を感じさせるのです。もしあなたがスターフェリーに乗船するなら、スターフェリーの思い出とも重なることでしょう。九龍から乗る時には「行ってらっしゃい」と、香港島から乗る時には「お帰りなさい」と、時計台が言ってくれているようですからね!