再開発で取り壊しが決まっている村、本当にまだあるの?

せまい土地を食いつぶす勢いで、再開発が進む香港。近年、古き良き香港は再開発の名の下にどんどん姿を消していっています。オールド香港の村の暮らしを見てみたくて、旧・啓徳空港のそばの、すでに取り壊しが決まっている村を訪ねてみました。風前の灯火ともいえるその村の名前は、「衙前圍村(アーチンワイチン)」といいます。“圍”とは日本漢字で“囲”、読んで字のごとく外敵から身を守るための壁や建物に囲まれた伝統的な様式の居住地区のことです。行き方もはっきりわからず、名前以外はほとんど情報がなかったため、本当に行けるかが心配でした。泊まっていたチムサーチョイのホテルで、オーナーのおじさんに「この村に行ってみたいのだけど、今でもあるかしら。もしかしてもう取り壊されてなくなっちゃったとか?」と聞くと、「まだあるよ!このホテルから近いよ。だけどまたどうしてそんなところへ行ってみたいの。君は歴史家なの?」と笑われました。

失われゆくオールド香港の暮らし、取り壊し寸前の村へ(前編) 失われゆくオールド香港の暮らし、取り壊し寸前の村へ(前編)

現存していた!感激はそこそこに、おずおずと潜入

タクシーの運転手に村の名前を漢字で示して、村の入り口まで連れて行ってもらえました。白く塗られた壁に囲まれており、車は村の中まで入れません。ひっそりと静まり返っていてせまい通りにはまるでひとけがありません。洗濯物が干してあったり、窓から明かりが漏れていたりすることから、人が住んでいることはどうにか感じられるものの、住人とは全然行き会いません。こういう場所に住む村人は写真を撮られることを好まないと聞いていたため、遠慮がちに入っていきました。なるほど、昔ながらの風情のあるところではありますが、どの家もとんでもなくボロボロです。半分朽ちているような家が、お互い寄りかかり合うようにして並んでいます。

初めて歩く伝統的な住宅地に、ドキドキ……

入り口の門口には左右に線香が立っていて、右側に小さな神棚があります。まっすぐ突き当たりまで進むと、天后廟(航海の守り神を祀る祠)に着きます。細い路地が碁盤の目になっており、通りからは家の中がわかりづらく、玄関すらどこなのかよくわからないという閉鎖的な構造の村です。そんな典型的なオールドスタイルの“圍”ですが、二階建ての低層住宅地をぐるりと取り囲み今にも押しつぶしてしまいそうなほどに、高層マンションがすぐそばまで迫ってきています。つまり、再開発の手がすぐそこに……(後編につづく)