車をチャーターしての大名旅行

インドの北東部、ビハール州のミティラー地方に伝わる「ミティラー画」の村を訪れるために、まずは同じビハール州のブッダガヤに滞在しました。日本で30年働いていたという宿のオーナーに、マドゥバニという町の近くにあるミティラー画の村ジトワルプルに行きたいと相談すると、インドでも最貧州のひとつであるビハール州の公共交通機関はあまり整備されていないので、乗換えなど面倒だし、車をチャーターしてはどうかと勧められました。昔ならローカルバスを乗り継いだでところでしょうが、今回は時間と体力を優先することにしました。

インドのトライバルアート 女性が家の壁に描く壁画「ミティラー画」の村を訪ねて(中編) インドのトライバルアート 女性が家の壁に描く壁画「ミティラー画」の村を訪ねて(中編)

最貧州ビハールを行く

4WDのジープに宿の専属のドライバー氏をつけてもらって、早朝4時にブッダガヤを出発しました。夜が明けて深い朝もやの中に現れた風景は、まるで30年前に初めてインドを訪れたときにタイムスリップしたかのようでした。インドでも最も貧しい地域と呼ばれるだけあって、掘っ立て小屋のような竹とわらで造られた家が並ぶ村が続きます。道はぼこぼこ、サイクルリクシャもぼろぼろで、人々は質素なサリーやショールをまとっていました。この一帯は、私が初めてインドに来た頃からほとんど変わっていないのではないかと、ジープに揺られながら考えていました。

ようやくミティラー画の村に到着

ネパールに近づくと、バイパスが整備され、建設工事中の部分もあったので、やがては州都パトナーからネパール国境までつながるのかもしれません。そのときは、きっとこの一帯も今よりも発展していくことでしょう。やがて、休憩をはさみつつ8時間近いドライブの末、マドゥバニの町に到着しました。マドゥバニは思ったよりもずっと大きな町でしたが、そこから2キロも行くと、目的のミティラー画の村ジトワルプルに到着。こんな辺鄙な村にジープで外国人が訪れれば、壁画を見に来たのだと誰もがわかります。自称「アーチスト」が現れて、自分についてきなさいと先導します。

壁画よりも紙に描かれた絵が優先?

私としては、自分で村を歩いて、壁に描かれた絵を見たついでに気に入った絵を買いたかったのですが、村人たちはとにかく絵を売りたくて、自由に散策もさせてもらえません。売るための絵は玉石混合というより、多くの石の中にごく稀に玉が入っているという感じ。家の外壁や室内に描かれた絵を見せてもらったら、その家の女性が描いた絵の束を持ち出してくるので、壁画を見せてもらったお礼のつもりで、一枚買うようにしました。なかなか運命の一枚には出合えません。(後編に続く)