なぜ、ここだけ対称ではない?

すべてが対称的に配置されるこのタージマハルの中で、ここの廟の墓の位置だけ対称ではないのは、もともとシャー・ジャハーンの墓が別に造られる予定だったからです。しかし晩年のシャー・ジャハーンは息子に帝位を簒奪され、アグラ城に幽閉されてしいます。そのため、シャー・ジャハーンの墓廟はわざわざ作られなかったのです。「妃の棺の脇に仕方なく置かれた皇帝の棺」、というのも哀愁を誘いますね。

世界遺産のタージマハルはどうやって観光する? 私が徹底ガイド致しましょう! その4 世界遺産のタージマハルはどうやって観光する? 私が徹底ガイド致しましょう! その4

美しく見せるための工夫が随所に

ここで天井を見上げてみましょう。内部の天井の高さは24m。「あれ? 外から見たよりもかなり低いな」と思われるでしょう。というのもこれは“二重殻ドーム”という様式のドームで、内側の半円のドームの上に一回り大きいタマネギ型のドームを被せ、外観を大きく美しく見せているのです。これは中央アジアの廟やモスク建築で使われる技法です。さらにいえば、目の前に見える棺にも仕掛けがあります。この棺は実は「セノタフ(模棺)」と呼ばれる仮のもので、ここにはムムターズもシャー・ジャハーンも葬られていません。本物の棺はその真下の地下室にあるのです。つまり上にあるのは、参拝用のものということですね。

美人には引き立て役が必要

最後に聖廟を出て、基壇の両脇にある建物に目を向けてみましょう。見た目はまったく同じ形をした、赤砂岩でできた建物です。左側にあるのがモスク、右側にあるのは迎賓館と言われています。中に入ってみると、モスクにはメッカを示すミフラーブがありますが、迎賓館にはそのようなものがありません。ただ、両方とも実用的な建物ではなく、あくまで中央の霊廟の引き立て役として作られた建物なのです。次に霊廟の裏側に回ってみましょう。テラスに立ってみると、目の前に見えるのがヤムナー川です。川を挟んだ向かい側には、「シャー・ジャハーンの廟が建設される予定だった」とも言われています。黒大理石を使った、まさにタージマハルと対になる建物の予定でした。

未完に終わった「黒タージ」

この「黒いタージ」とも言うべき建物は、皇子たちの反乱、そして皇位の簒奪によって建てられることはなくなりました。建てられる予定だった場所は、現在はマターブ・バーグという公園になり、夕陽のタージマハルを見る絶好のポイントとなっています。一画には1990年代に発見されたというムガル帝国時代の遺構が残されています。ここに立つと、「もし、ここにもうひとつのタージがあったなら」という想いがよぎります。こんなことを知ってアグラの地を訪れると、もっとタージマハルを楽しめることと思います。