絣のルーツはインドにあった

絣がインドで生まれたことをご存知でしょうか。インドから東南アジアを経て琉球に入り、日本でも伝統産業になりました。つまり絣は広くアジア全域で愛用された織物なのです。例えばインドネシアで有名な布といえばバティック(更紗)とイカットですが、このイカットが日本でいう絣にあたります。インドネシアの島々で織られるイカットはすべてが手織りで、島によって異なる伝統的な文様をした美しいものですが、その中でもとりわけ貴重なのがグリンシンと呼ばれる布です。これはダブルイカットといい、経糸と緯糸の両方に模様をつけて染める非常に高度な技術を要する技法です。この技法のルーツはインドのパトラ織りだといわれています。

インド、パタンに残る伝統の布地パトラ織り インド、パタンに残る伝統の布地パトラ織り

パトラ織りは今でもインドで織られている

いったいそのルーツはインドのどこにあるのしょう。実は、今でもそのパトラ織りはインドのたった一つの家族が織り続けています。インド西部にあるグジャラート州の州都アーメダバード近郊にあるパタンという小さな町で、サルヴィ家という一族が営む工房で連綿と織り続けられているのです。インドにはカースト制度があるので、職業は世襲されることが多いのですが、このパトラ織りという高度な技術と手間がかかる仕事は、化学染料と機械織りに押され、今やサルヴィ家一族しかやる者がないのだそうです。その模様の精緻な美しさは息をのむほどですが、インドでは超富裕層にしか買えない高価な布です。

パトラ織りによる超高級サリーのお値段は?

パトラ織りで1枚のサリーを織るのに半年から1年かかるといい、価格も100万円以上。この工房でも8人の職人で作業し、1年間に織れるサリーはわずか5枚です。なので、オーダーしても数年は待たなければならないとのことです。スカーフでも数万円という高価なものですが、この工房にはときおり観光客が見学にやってきて、そのようなスカーフを買い求めていくそうです。世界中の絣のルーツであるパトラ織りが今でも現存し、こうやって伝統の技法が数百年ものあいだ連綿と受け継がれているのです。インドの職人世界の奥深さに驚かざるを得ません。