大学のキャンパスでエリート学生さんと出会う

アムリトサルの黄金寺院から4kmほど離れたところにあるグル・ナーナク大学は、郊外だけあってとても広々としたキャンパスです。強引で親切なリキシャマンはここまで漕いでだいぶ疲れていましたが、校門で待っていてもらいました。5人ほどの学生グループに話しかけられ、研究室を見学させてもらえました。彼らは、自然科学と化学という、文学系の私にはちんぷんかんぷんの学問を専攻しており、皆賢そうで裕福そうな若者たちです。英語力も私よりずっと高く、私が英会話についていけずに首をひねっていると、実験器具などを示しつつ幼児に教えるように簡単な説明をしてくれるので、ありがたくも情けない気持ちになりました。

アムリトサルの名門大学へ、リキシャで探訪(後編) アムリトサルの名門大学へ、リキシャで探訪(後編)

どっちを取ったらいいの?困りました

屋外のベンチでチャイをごちそうになり、(貧困な英語力で)あれこれ話しているうちに、彼らは「あのリキシャマンは顔つきが信用できない。彼をここでお払い箱にしなさいよ。もっとキャンパスを案内してあげるから。と誘ってくれたのです。エリートである彼らは、みすぼらしいリキシャマンが信用できない男に映ったようです。けれども、リキシャマンのほうは、「他に危ない学生もいっぱいいるから、このまま帰る方がいい」と言います。彼は彼で、学生を信用していないようです(こんな場所でお払い箱にされるのも困るのでしょうが)。

迷った末、選んだのは……

学生諸君とリキシャマン、どちらも頼りなさそうな外国人旅行者の身を案じてくれるのはありがたいけれど、このときの緊迫感あふれる気まずさには本当に参りました。学生は「リキシャマンに相談しないで自分で考えてどうしたいのか決めなさい!」と厳しく言ってくるし、困り果ててしまいました。もう陽が暮れてきたし、そろそろ帰った方がいいと思ったのでリキシャマンを取ることにしました。学生たちには心から謝って、大学をあとにしました。

見かけによらずカッコいいことを言うリキシャマン

このあと、リキシャマンは街一番の中華レストランへ連れて行き、私を宿まで送り届けると、適正な金額だけを受け取って「学生なのだから、お金のないのは当然。日本に帰って、もっとお金を稼いだらまたインドに来て、たくさんお金を払いなさい」と言って去っていったのです。最後までそつのないことを言う、本当にいいリキシャマンだったのでした。

人を信じることは難しいけれど

もしこのとき、学生グループを取っていたら、別の楽しい展開もあったかもしれません。でも嫌な思いをしたかもしれません。なんともいえないのです。ただ、私は、エリート大学生と下層労働者のリキシャマンとの板挟みに遭って、両方の世界をほんのちょっと垣間見ただけに過ぎません。人を信じるタイミングって難しい……と実感しました。最後に聞いてみる相手は自分。信じどきの勘を養って、いい旅を作りましょう。