ボーパルの長い名前の博物館へ

インド中央部のマディヤ・プラデーシュ州の州都ボーパールにある丘の上に、長い名前のちょっと変わった博物館があります。「ラーシュトリヤ・マーナヴ・サングラーハラヤ」がその名前。長くてとても覚えられそうにありませんが、意味は「人類博物館」です。ここに展示してあるのは、インドで「アディヴァシー」と呼ばれる先住民の作品です。インドがヒンドゥー教の国になる前、つまりおよそ2000年以上前からずっとインド亜大陸に先住していた人々がいて、今でもそういった人々がヒンドゥー化される以前の文化を伝えているのです。彼らの作品がこの博物館に展示されています。

インド、ボーパルの博物館に先住民アートを見に行く(前編) インド、ボーパルの博物館に先住民アートを見に行く(前編)

インド先住民アディヴァシーたちが描く絵

アディヴァシーはインド全土で5000万人いるといわれています。人口12億のインドでは少数民族ですが、決して少ないわけではありません。約500部族にわかれ、それぞれの民族が昔からの伝統を様々な形で今に伝えています。その中の絵として代表的なものに、ピトラ画、ゴンド画、ワルリー画があります。これらはいずれも家の土壁などに描かれてきたものですが、それをキャンバスや紙に描く絵師あるいはアーティストが登場し、博物館に展示したり、販売するようになってきました。

ラトワが描く祈りのピトラ画

ピトラ画は、グジャラート州からマディヤ・プラデーシュ州にかけて住むラトワという民族の宗教画です。家の内壁に、五穀豊穣や家畜の増殖を祈願して、絵師が馬の絵を描きます。そこにはラトワの神話や宇宙観が表現され、絵そのものに神が宿るとされ、信仰の対象となっています。ここにはヒンドゥー教の神々は登場しません。運がよければ、農家に招かれて内壁に描かれたピトラ画を見ることができますが、普通はなかなかそれは難しいと思いますので、この博物館でご覧下さい。子どもが描いたような素朴な絵ですが、西洋絵画にはない独特な味わいと、敬虔な祈りの姿を感じることができるでしょう。(後編に続く)