日本人では「インド人は毎日ナンを食べている」と思っている?

人から聞いた話ですが、先日テレビで「実はインド人はナンを食べない」というテーマを取り上げ、一部のインド好きの間で話題になったそうです。私はその番組を見ていませんが、確かに日本のインド料理店ではほぼカレーとナンがセットになっているので、「インド人は毎日ナンを食べている」と思ってもおかしくはありません。だから「実はナンはあまり食べていない」と知ると、意外に感じるのでしょう。私は仕事柄インドを毎年のように訪問しているのですが、ナンを食べることはあまりありません。たぶん、100回に1回食べるか食べないかぐらいの割合です。かといって、インドでナンはかなりレアなパンかというと、そうでもありません。そこそこのレストランならメニューに載っています。それではいったいインド人は、何を主食としているのでしょうか。

手ごろな値段のターリー(定食)。左上に見えるのがロティ(チャパティ) 手ごろな値段のターリー(定食)。左上に見えるのがロティ(チャパティ)

地方によって主食は違うインド

ひと言で“インド”と言っても、その国土は日本の9倍もあり、食事にも地方色があります。しかし主食を大ざっぱに分けると、“北”が麦を原料にしたパン、“南”がお米ということになります。つまり“北”ではパンをカレーに浸して食べ、“南”ではご飯にかけて混ぜて食べるのです。と言ってもきれいに分かれているのではなく、基本がそうだということです。さて、インドではパン類を総称して“ロティ”と呼ぶのですが、よく食されているのは、溶いた小麦粉を練って団子状にし、それを薄く延ばして鉄板の上で焼いたもの。パンというよりクレープに近いですが、甘くはありません。一般的には、このロティを一回の食事で、たいてい2〜4枚食べます。

一般のインド人はナンよりロティを食べる?

このロティの一種に、ナンやチャパティ、パラタがあります。インドのふつうの食堂やレストランでは、特にナンやパラタ(地が厚く、お好み焼きみたい)を指定せずに「ロティ」を頼むと、ロティまたはチャパティが出ます(ロティとチャパティは焼き方が違うだけ)。ナンは食べたことがある人が多いので分かると思いますが、日本のパンのように発酵させたモチモチとした食感で、一枚のボリュームも大きく、お腹にけっこうたまります(サイズも一般的なロティの倍ぐらいあります)。このナンは、インドではどの食堂やレストランにもあるというものではありません。「発酵させる」という手間がかかることもあります。もともとは「タンドゥーリ」という専門の釜で焼いたものが正式なもので、つまりその釜があるような、タンドゥーリ料理を扱う“いい”レストランにあるものなのです。

カレーにはナンよりもロティが合う

ふつうのインド人の家庭では、タンドゥーリの釜がある訳もなく、また発酵させて焼くとあって、本式のナンは作りません。北インドに住むインド人の友人に聞いても、「1年で数回ぐらいしか食べない」と言っていました。タンドゥーリチキンなどのタンドゥーリ料理と合うのがナンなので、そういったレストランで食べるのが一般的というのが正解のようです。実際、どろっとしたカレーにつけて食べるには、ロティのほうが合うんですよね。ということで、「インド人はナンを食べない」は、ほぼ正解と言ってもいいでしょう。