一説には「マハーバーラタの時代に造られた」ともいわれる井戸

「デリーの階段井戸」その1からの続きです。「Agrasen(またはUgrasen) ki Baoli(アグラーセン・キ・バオリ)」とは、そのまま「アグラーセンの階段井戸」という意味です。アグラーセンは伝説の王様の名前で、この井戸は、古代(時代不詳)に造られていたものが14世紀ごろに再建されたようです。インドでは階段井戸のことを「Baoli(バオリ)」や「Vav(ヴァヴ)」と呼びます。

井戸の敷地内にあった遺跡 井戸の敷地内にあった遺跡

気合を入れていくと拍子抜けしそうな、のんびりしたムード

この井戸は、インド各地にある華麗な装飾の階段井戸に比べると、かなりシンプル。それでも非日常的な空間に興奮することは間違いなしです。私がここに行ったのは、日曜日のお昼頃でした。入場料無料ということもあるのか、門の中にはほどほどに人々がいます。しかし、周辺は静かな住宅地。門の前には客待ちのオートリキシャが2台ほど止まっているきりで、他にはごく小さなお菓子の屋台ひとつだけという、商売っ気のなさです。

何気ない風景に溶け込む、井戸の門前の様子 何気ない風景に溶け込む、井戸の門前の様子

都心部にありながら喧騒と無縁のスポット

歩いている人々も、いかにも遠方から来ていそうな観光客はほとんど見当たらず、地元の友達同士や家族連れ、遠足の子供たちといった、のどかな顔ぶれです。たくさんの子供たちが、先生の号令で、一斉に井戸の階段を駆け上がっていきます。外国人の私がめずらしくて、一緒に記念写真を撮りたがって近寄ってきました。小学生がみんな手にモバイルフォンを持っていて驚きましたが、笑顔は無邪気そのもの。こんな素朴なふれあいは、観光地ではなかなかないことです。ここが本格的に観光地化されるのは、まだ先のように思えました。

遠足か社会科見学? みんな楽しそうでした 遠足か社会科見学? みんな楽しそうでした

やっぱりカッコいい、さすがインド建築!

階段井戸は、完璧なシンメトリーの構造をなしています。この美しさを味わうためには、まずは向こう正面の壁に向かい、階段を降りずにちょうど中心に立ってみるのがいいでしょう。実際の奥行き(60メートル)よりも、向こうの壁面が遠くに感じられるかもしれません。ここの真髄は、直線と曲線の取り合わせの美しさではないかと思います。シンプルの極みである直線的な基本構造に、何十となく空けられたアーチ型の通路(の跡か)がリズミカルに加わることで、荘厳な雰囲気にたおやかな親しみやすさが生まれているように感じました。もっともこれは私の個人的な印象で、人によって受ける印象はさまざまであろうと思われます。それが、シンプルな建造物ならではの良さです。(その3に続く)

階段井戸全貌。遠くには高層ビル群が 階段井戸全貌。遠くには高層ビル群が