かつてはノーベル平和賞受賞者に謁見できたのに……

北インドの高原地帯にダラムサラという町があります。首都のデリーから、ツーリスト用の夜行バスで12時間。元はイギリス人が開発した避暑地です。しかし1959年、中国から逃れてきたチベット難民のために、この地に「亡命政府」が樹立され、ノーベル平和賞受賞者のダライ・ラマ14世法王がその国家元首となりました(今は引退)。ダラムサラの北にあるマクロード・ガンジ地区には法王の宮殿があり、6000人以上の亡命チベット人が暮らしています。僧侶も多く、紅色の袈裟を着たお坊様が行き来する様子は、インドではなく、チベットではないかと思えるほどです。道端にはチベット人の露店が軒を連ね、チベット人に混じって、道を外国人旅行者やインド人旅行者も歩いています。その昔は申し込めば、ダライラマ法王に謁見できたのですが、いまでは拝謁できなくなってしまいました。

突撃! 海外のラーメン〜チベットの麺料理「トゥクパ」 突撃! 海外のラーメン〜チベットの麺料理「トゥクパ」

インドに中華料理を広げた人々?

この30年で、インド各地でチベット人を目にするようになりました。入植者だけでも10万人はいるとか。物品商売をしている人を多く見かけます。今ではインドのどこへ行っても、「チョウメン」(焼きそば)が食べられるようになりました。インドの中華料理は、コルカタの華僑が発祥と言われています。しかし印中の関係が芳しくない中、華僑のコミュニティーは縮小しています。それなのに、インドカレー至上主義のようなこの国で、チョウメンだけが広く全土に普及していったように思えてなりません。これは、行商のチベット人たちが、乾麺をインド各地に流通させたから…。そんな想像すら膨らんでしまいます。インドの田舎で生麺はなく、それでもチョウメンだけはあるのですから。もちろんダラムサラでは、チベット人が経営するチベット料理屋がたくさんあります。インドカレーに飽きた外国人旅行者にとって、これは大きな魅力です。

チベットラーメンはハレの日のご馳走

みんなが食べる代表的な料理が、「トゥクパ」(ラーメン)に「モモ」(餃子)、チョウメンです。トゥクパの麺は、黄色いのも白いのもありますが、全体的に太麺です。具材は野菜たっぷり系もあれば、羊の挽肉、羊肉、チベットではヤクの肉や山羊の肉が入れられることもあるといいます。小麦の希少なチベットでは、ハレの日のご馳走として食べられてきたそうです。インドカレーばかりだった日々からの解放感は、たまりません。じんわりと五臓六腑に沁みわたるうまさは、ダラムサラだからこそかもしれません。付け合せに食べる大ぶりのモモの具は、羊肉と野菜があります。皮から作っているのでモチモチして分厚く、皮もうまいです。ネパールでもチベット料理屋さんは多いので、インドかネパールにお越しのおりは、是非どうぞ。