南インドの交通不便な所にある世界遺産

南インドのカルナータカ州北部に、ハンピという小さな村があります。州都バンガロールからは直行の交通機関はなく、最寄りの町ホスペットまで、列車かバスで9〜10時間かけて移動し、そこからローカルバスに乗り換えてさらに30分。近くには空港もないので、行くにしても上記のバンガロールか、またはゴアからバスで10時間と、とにかく交通不便な所なのですが、世界遺産にも登録された南インド有数の観光地なのです。とはいえやはり不便で行きにくいので、「インドの世界遺産」といっても、北インドのタージマハルに比べたら、訪れる人はケタ違いに少ないでしょう。しかしここにはタージマハルにも負けない、人々を引きつけるすばらしい景観があるのです。

南インドの世界遺産・ヴィジャヤナガル王国の都の廃墟ハンピを行く(前編) 南インドの世界遺産・ヴィジャヤナガル王国の都の廃墟ハンピを行く(前編)

岩山に囲まれた小さな村

緑が多い南インドですが、ホスペットから乗ったローカルバスがハンピに近づいて行くと、周囲の風景はむき出しの岩石がゴロゴロした、荒涼とした風景に変わって行きます。もちろん木も生え、時おり畑もありますが、茶色の部分が多いのです。やがてバスは寺院前の小さなバザールに着きます。ここがハンピ村で、旅行者向けのゲストハウスやレストラン、土産物屋などがありますが、端から端まで歩いても5分もかからないほどの大きさです。しかしここは南インド有数のバックパッカーたちのお気に入り場所で、長居をする人も少なくありません。私は一ヵ月滞在しているという日本人の若者にも会いました。いったい何が魅力なのでしょう。

16世紀に絶頂期を迎えた王国の都として

今でこそハンピは遺跡に囲まれた小さな村ですが、14世紀から16世紀にかけては南インドに覇をとなえたヴィジャヤナガル王国の王都でした。日本でいえば室町時代から戦国時代ぐらいのことですね。当時、北インドはデリーを都とするイスラム教の諸王朝が栄えていましたが、それに対向するようにこのヒンドゥー教の王朝があったのです。最盛期は16世紀初頭。この都は内陸にありますが、王国はアラビア海とベンガル湾の両方に面した港湾都市を手に入れ、貿易で多くの富を手に入れたといいます。ヴィジャヤナガル王国は、ポルトガル、アラブ、ペルシャ、明など交易をし、都のヴィジャヤナガル(現ハンピ)は人口48万人を数える大都市に発展しました。当時の世界では、明の都の北京、オスマン帝国の都のイスタンブールに次ぐ大都市だったといいます。(後編に続く)