デカン高原にある世界遺産の建築

南インドの世界遺産の「遺跡」となるとデカン高原のハンピが有名ですが、そのハンピから車で5時間ほどさらに北に行った所に、「パッタダカルの建造物群」という世界遺産があります。こちらは、アクセスが不便なハンピよりもさらに不便といえば不便な、陸上移動でしか行けないところです。州都バンガロールからは列車やバスで12時間。遠いですね。だからあまり訪れる人が少ないのですが、とはいっても人の住まない荒野にある訳ではありません。町も近くにありますし、周辺は農地と村が続いているので、さびしい所ではありません。

南インドの世界遺産・インド寺院建築の展示場ともいえるパッタダカルの建造物群 南インドの世界遺産・インド寺院建築の展示場ともいえるパッタダカルの建造物群

8世紀に南インドで栄えた王国

この「パッタダカル」とはどんな所で、どんな建造物が貴重なのでしょうか。インドには多くの寺院遺跡がありますが、このパッタダカルにあるヒンドゥー寺院は、そのなかでもかなり古い部類に入ります。このパッタダカルから西へ21km離れたバーダーミを都として、現在のインドの中央部に6世紀から8世紀にかけて版図を誇ったのが前期チャールキヤ朝です。日本でいえば古墳時代から飛鳥時代にかけてで、聖徳太子や法隆寺の時代といえば、「かなり古い」ということがわかるでしょう。その前期チャールキヤ朝の第2の都が、ここパッタダカルでした。

建築様式の発展前の寺院群が並ぶ

「古い」ということで、ここには後に発展して行く、インドの寺院建築の原型ともいえる寺院建築が見られます。残っているのは、ヒンドゥー教寺院が8つ、少し離れた所にあるジャイナ教寺院がひとつです。寺院は発展前のものなので、他の地域にある巨大な寺院に比べたら、まだまだ小ぶりといってもいいでしょう。見た目のインパクトはそれらの寺院に負けるかもしれません。ただ、そうした歴史を知っていると、「ああ、前にあそこで見た寺院は、この寺院が発展したものなんだ」とわかり、面白みが増すでしょう。

まるで寺院の住宅展示場

このパッタダカルにある寺院群は、「北方型」と呼ばれる砲弾型の塔を持つ建築と、「南方型」と呼ばれる層をピラミッド状に積み重ねて塔を作る建築の、両方の建築が混在しています。しかしそんなことを知らなくても、手の込んだ寺院建築は見応えがあります。狭い範囲にいろいろな形の寺院が不自然なぐらいに密集しているのは、さながら「住宅展示場」のようでもあります。これを手本にして、各地でカスタマイズされた寺院が造られたと想像してみるといいでしょう。このようなすばらしい寺院群を作った前期チャールキヤ朝ですが、寺院の完成後わずか10年あまりで滅んでしまいます。これらの寺院建築は、王朝最後の“華”だったのかもしれません。