妙なおじさんとの忘れえぬ出会い

数年前インドを旅していたときに、ちょっと変わった人に出会いました。それはインド西部のラジャスタン州にある都市、ジャイプールでのことでした。何か問い合わせをしたくてインド政府観光局(カサ・コティ)に行った私は、担当者をしばらく待っていました。するとどこか妙な感じの中年男性が現れたのです。白いインド服に身を包んだその人の首の回りには、太くて赤いひもが何重にも巻きつけてありました。会った瞬間に気になって仕方なくなり、観光に関する質問もそこそこに、そのひもは何かと尋ねました。

首の周りに赤いひものようなものを巻いたおじさん 首の周りに赤いひものようなものを巻いたおじさん

首周りのひもの正体は

するとそのおじさんは得意げにほほ笑み、2冊の大きな本を取り出して来て広げました。そこにはなんと王侯のような服に身を包んだ、おじさんの写真が載っているではありませんか。写真の中のおじさんの手には、左右に長く伸びたひげが握られていました。この本はギネスブックで、おじさんは「世界一長い口ひげを持つ人」として、2度にわたり掲載されたそうなのです。赤い布に包まれてひものように見えたのは、実はおじさんの口ひげなのでした。

ギネスに掲載された「長い」インド人たち

この人の名前はラム・スィン・チャウハン(Ram Singh Chauhan)さん。1982年から伸ばし続けている口ひげは長さ約4.3mもあり、きちんと洗ったり油を塗ったりしてお手入れしているとのこと。ギネスブックは確か、2010年と2012年のものだったと思います。撮影のためにイタリアに招待され、自前の豪華な服を持って赴いたと話してくれました。ちなみにギネスブックの同じページには、世界一長いあごひげを持つ人や、世界一耳毛が長い人などもいましたが、それらは皆インド人でした。

毛を伸ばすのにはどんな意味が……

インド人はなぜ、そんなに伸ばすのが好きなのでしょうか?これは推測ですが、もしかするとインドでは、何かをし続けるということがよいこととみなされているのかもしれません。インドにはひとつのものをずっと食べ続けたり、腕を何十年も上げ続けたり、という修行をする人々がいるのです。このチャウハンさんは、友人のすすめで口ひげを伸ばしはじめ、ギネスに認定され、以来いくつものインド映画に出演し、ついには観光局に職を得たそうです。ひげによって人生が大きく変わったといえるでしょう。チャウハンさんは、外国人旅行者にも喜んでひげを見せてくれるとのこと。ジャイプルを訪れたらぜひ訪ねてみてくださいね。