日本にも伝わる木版染め

衣食住の「衣」は、私たちの生活に必須の要素です。身に着ける布を美しくするために、世界各地で古来から様々な工夫がなされてきました。ろうけつ染めや絞り染め、型染めなどの伝統的染色法がありますが、南アジアに伝わる木版染めもそのひとつ。木片にさまざまな模様を彫り、染料を付けてスタンプのように布に押していく染色法です。古くは日本にも伝わった技法ですが、非常に手間がかかるため現在はほとんど行なわれていないとのこと。でも本場インドへ行けば、今でも実際にこの方法で布を染めている光景を見ることができます。

木版で布を染める染色の郷、インド、ラージャスタン州のサンガネール 木版で布を染める染色の郷、インド、ラージャスタン州のサンガネール

インドのサンガネールで染めの工程を見学

そのような場所のひとつが、インド北西部のラージャスタン州の州都、ジャイプルの16km南にあるサンガネールです。染色で知られる小さな町で、布の木版染めのほかに紙作りも盛んです。点在する小さな工房はまるで民家のように見えますが、思い切って入っていくと、職人たちが薄暗い建物の中で布に版を押す光景が見られます。リズミカルに型を押して、色ムラのない連続模様をどんどん布の上に広げていく技はさすが職人です。いくつもの版木を色を変えて使い、わずかなズレによって染め残された白い部分が、またいい味を生み出しています。

布を洗い、版木を彫る

染めが終わった後は、布を乾かして水洗いし、余分な染料や汚れを落とします。その作業場が、広い空き地のような場所に作られていました。一角にはコンクリートの水槽があり、男性が布をたたきつけるようにして洗っていました。洗いあがると巨大な脱水機で水分を落とし、地面に広げて乾かします。また、町歩きの途中で、版木を彫る職人たちが集まる場所に行き当たりことができました。木片の一つの片を、彫った部分が分かりやすいようにチョークのようなもので白く塗り、その上から模様を下描きします。小さなノミの先を彫る部分に当て、反対の先を木の棒でたたきながら彫っていきます。非常に繊細な模様を失敗なく彫るには、染色職人同様、相当な訓練が必要とされそうです。

あなたも木版染めにチャレンジできる

インドの有名な観光地とは違って、サンガネールの人々はとても素朴でフレンドリー。外国人が行くと笑顔で歓迎してくれるのが嬉しいです。ジャイプルからサンガネールまで行く時間がないという人は、ジャイプル近郊、お城で有名なアンベールにある博物館がおすすめです。質の高い木版染め製品で有名なブランドの「アノーキー」が運営しており、木版染めに関する展示や染めの実演を見学できます。また、ハンカチなどを使っての木版染め体験も可能。世界にひとつだけの自分の作品を作れば、旅のまたとない記念になることうけあいです。