まるで現代建築。不思議な形のこの建物の正体は?

北インドに「ジャンタル・マンタル」という建築物があるのをご存知ですか? 何だか呪文みたいな名前ですよね。「ジャンタル」とは「機械」、マンタルは「計測」という意味なのですが、いったい何を計測するのでしょう? 私が最初にこのジャンタル・マンタルを見たのが、デリーの中心、コンノートプレイスの近くでした。行き止まりの階段が付いた薄っぺらな直角三角形型の建物や、薄い壁が円形に円柱を囲んでいるものなど、不思議な建物が10以上並んでいるのです。知らなかったら、シュールレアリズムの影響を受けた現代建築だと思ってもおかしくありません。また子供のかくれんぼ用の遊び場のようにも見えます。しかしその正体は、「天文台」でした。

北インドに4カ所ある不思議な形の建築物「ジャンタル・マンタル」。その正体は? その1 北インドに4カ所ある不思議な形の建築物「ジャンタル・マンタル」。その正体は? その1

ジャイプールのマハラジャが建てた建物

時は18世紀。北インドはデリーから南東へ300km弱離れた、現在はラジャスタン州の州都であるジャイプール周辺は当時ムガル帝国の統治下でしたが、マハラジャ、サワーイ・ジャイ・スィンのもと、自治が認められた王国がありました。サワーイ・ジャイ・スィンは、それまで郊外のアンベールにあった都と宮殿を現在のジャイプールに移したマハラジャです。彼はまた天文マニアだったらしく、インド各地に5つの天文台を設置しました。最初に作ったのが、私が最初に見たデリーのもので1724年のこと。次に、ジャイプール市内の宮殿そばに5つの中では最大規模のジャンタル・マンタルを1728年に建設しました。残りの3つはウッジャイン(1734年)、ベナレス(1737年)、マトゥラー(1738年)です。

ジャイプールのジャンタル・マンタル

現在では天文台は、「人里離れた山の上」というイメージですが、それは町の光が入らず、しかも空気がきれいな所を求めた結果です。これらのジャンタル・マンタルが造られたころは、当然ながら電気はなく、夜になれば町でも真っ暗。車の排気ガスもないので、場所は町なかでも良かったのでしょう。さて、5つのうちで最大であるジャイプールのジャンタル・マンタルには、全部で16基の観測儀があります。その中で直角三角形を立てたような形し、高さ約27mともっとも大きくいのが「サムラート・ヤントラ」という建築物です。階段が付いて上れるようになっていますが、その角度と方向は北極星を差しているとか。この建物は、時間、子午線などを測るために造られました。

それぞれの観測儀の機能は?

このジャイプールのジャンタル・マンタルには、他にも太陽の高度を測って時間を知ったり、恒星や惑星の位置を測ったりする観測儀が並んでいます。12の星座の位置を測るために12の小さな観測儀が並ぶ「シーシ・ヴァラヤ・ヤントラ」や、ジャイプールの位置を計測し、時間を測るための「ラグ・サムラート・ヤントラ」などがあります。こうしたものを見ていて気づかされるのは、今では当たり前になっている「標準時」という観念が、当時はなかったということですね。たとえば東京と大阪でも、日本国内であれば12時は12時ですが、この時代では同じではありません。太陽の動きに合わせて決めるのですから、当然ですよね。ちなみに東京と大阪ぐらい離れていると、太陽の位置は同じ日でも20分ぐらいズレているそうです。(その2に続く)