インド最南端の大洋に突き出た岬

地図を見ると気がつきますが、インドはユーラシア大陸から突き出た、大きな三角形の半島です。しかし半島と言っても、「インド亜大陸」とも呼ばれるほど広く、面積はEU加盟国を合わせたほどの広さ(日本の約9倍)があります。そのインドを囲む大洋がインド洋で、さらにインドの東をベンガル湾、西をアラビア海と言います。今回紹介するのは、そのインドの最南端、三角形の先端にあるコモリン岬(カニャークマリ)です。この場所は、古来よりベンガル湾、インド洋、アラビア海の3つの海が交わり、太陽が海から昇り海に沈むインド唯一の場所として、聖地として知られてきた場所なのです。

一度は行ってみたいインド最南端の地、コモリン岬(カニャークマリ) 一度は行ってみたいインド最南端の地、コモリン岬(カニャークマリ)

東西交易で栄えていた古代のインド

インド洋交易は、紀元前から行われていました。西ではローマ帝国が栄えていたころ、インドではデカン高原を中心にサーハヴァーダナ朝(アーンドラ朝とも)が栄えていました。この王朝は、インドの東西両岸も治めており、ローマとの海上交易を行っていました。インドからは香辛料や宝石などが西に運ばれ、その代金としてローマの貨幣がインドに流れてきました。2世紀に書かれたプトレマイオスの『地理学』にも、インドやこのコモリン岬の座標が記述されています(実際よりインドはかなり小さく記されていますが)。

独立後はタミル・ナドゥ州に編入

コモリン岬には大きな港があるわけではなく、港湾都市としては発展しませんでした。しかし、アフリカの喜望峰同様、航海時のランドマークとして知られていたようです。この地は、18世紀以降はティルヴァナンタプラムに都を置いたトラバンコール藩王国の領土だったので、本来ならばケララ州に属するはずなのですが、タミル系住民が多いことからインド独立時にタミル・ナドゥ州に編入されたようです。なのでマドゥライなどのタミル・ナドゥ州の大きな都市よりも、ケララ州の州都ティルヴァナンタプラムの方が近いのです。また、インド国鉄の最南端の駅も、ここにあります。

インドでは聖地として名が知られているコモリン岬

コモリン岬の現在の名前は、カニャークマリ。これはカニャークマリ女神をまつるクマリ寺院がここにあることから付いた名前です。この女神は、インドで人気の神クリシュナの妹とも言われています。三つの海が交わる場所「サンガム」のそばに建てられたのが、この寺院です。クマリ寺院から300〜400mほど離れた海の上には、19世紀後半に活躍したインドの宗教家のヴィヴェーカーナンダが瞑想した場所(岩)もあります。そんな訳で、ここはインドではコモリン岬は有名な巡礼地のひとつでもあり、毎日、参拝客が訪れています。ただし、北インドのベナレスのような喧騒はありません。全体として、地方のゆったりとした空気が漂っている場所なのです。(その2に続く)