楽しいけどつらいことも多い、インドの旅

インドの料理は、日本食とは比べ物にならないほどスパイスを多用し、辛さも強烈なものがほとんどです。インドを旅行していると、辛いものが好きな人でもだんだんその刺激が辛くなってくることがあるでしょう。また、日本より厳しい気候や、衛生状態の違い、旅の疲れなどで、体調を崩す旅行者も多いのがインドです。私もインドを長く旅していたころ、一緒に行った友達がひどく胃腸を痛めてしまったことがあります。

優しい味のインドのおじや「キチュリ」は、旅の思い出とともに 優しい味のインドのおじや「キチュリ」は、旅の思い出とともに

インドで“おじや”?本当に?

私と友達は、順番にお腹を壊したり風邪を引いたりしながら旅を続けていました。その上、そのときは友達が粗悪なラム酒を飲んでしまい、二日酔いに苦しんでいました。「なにか胃に優しいものを食べたい……」。インド中部、カジュラホの田舎道を二人でとぼとぼ歩いているとき、日本語をしゃべれるインド人とたまたま会いました。「そういうときは、オ・ジ・ヤ、がいいでしょ」と、ある店に連れて行ってくれたのです。そこはとても観光客向けとはいえない、ただの屋台でした。

にんにく風味の優しい味に感激

ビニールシートで間に合わせの屋根を付けただけのその店には、軒先に椅子とテーブルがいくつか置かれていました。おそるおそる座ると本当にたちまち“おじや”が出てきたのです。見た目は、今までさんざん食べ続けてきたインドのカレー味の食事とは似ても似つかない、そっけないほどにあっさりしたおじやそのもの。にんにくの効いた塩味で、ぜんぜんカレー味じゃありません! 「まさかインドでおじやを食べられるとは」という意外さも手伝って、そのおいしさに感激しました。このときの“おじや”は、辛い食事を食べ続けて参っていたインド旅行の中でも、ベスト3に入る思い出の味となりました。

“インドおじや”の正体は「キチュリ」

あとで調べてみると、これは「キチュリ」という名前の、インドの滋養食でした。旅行者がふつうに入るレストランではまず出てきません。風邪を引いたときや病院で病人食として食べるものだそうです。材料は米とムングダール(インドの小さな豆)、にんにくと生姜、好みで野菜類や、クミンシードやターメリック、コリアンダーなど、インド料理定番のスパイスも入れるようですが、私が食べた屋台では、スパイスはほとんど感じませんでした。

思いがけない出会いが、一生の思い出に

旅というのは、思いがけない食の思い出をくれるものです。この旅行でも、もし体調がいいままだったら、キチュリとは決して巡り会うことがなかったでしょう。今でも「あのときの屋台のキチュリが食べたいなあ」と、なつかしくカジュラホのことを思い出します。あなたの思い出に残る旅の味は、何でしょうか?