手工芸品の宝庫インドの制作現場はどこにある?

インドの東にある西ベンガル州には、州都のコルカタ以外あまり有名な観光スポットはありません。しかし、田舎をぶらぶらと歩くと、思わぬ発見ができるおもしろいところでもあります。コルカタから北西へ約100km、バンクラ県は陶芸や真鍮細工の職人たちが数多く住んでいる場所として知られています。インドは手工芸品の宝庫といわれていますが、その制作現場をちょっとのぞいてみることにしましょう。

インド、西ベンガル州へ手作り工芸品の制作現場を見に行く(前編) インド、西ベンガル州へ手作り工芸品の制作現場を見に行く(前編)

伝統的なテラコッタの陶芸技術

バンクラ県の中心地バンクラの近郊に、その職人の村があります。インドにはカースト制度があることはよく知られていますが、このような職人もひとつのカーストなので、こうやって村に集団で暮らしていることが多いようです。まず陶芸の村パンチムラへ行ってみましょう。もともと西ベンガル州ではこういった陶芸が古くから盛んに行われてきました。それが美しく装飾されたテラコッタ(素焼き)になって、独特のヒンドゥー寺院を造り出しています。このパンチムラもそういった陶芸村のひとつです。

なぜインドではテラコッタの壺を使うのでしょうか?

高い温度で焼成する日本の陶芸は密閉できる窯を用いますが、こちらはそのような窯はほとんど使いません。テラコッタはそれほど高い温度を必要としないので、囲いの中に積んで薪を焚いて焼成します。インドではテラコッタの壺が日常的に使われています。これに水を入れると、素焼きの壺から水が少しずつ染み出してきて、それが蒸発します。すると気化熱が奪われて、壺の中の水が冷えるのです。他に穀物を入れる壺も同じように作られますが、農家の女性たちは自分で作ってしまうこともあるそうです。

道具がほとんどないインドの陶芸

インド中東部で最もポピュラーなテラコッタの置物は馬の像です。馬は神の乗り物として神聖視される動物です。守り神として家の玄関脇に対で置かれることが多いのですが、役割としては日本の狛犬と少し似ていますね。大きなものは高さ1mほどもありますが、このような大きなものでも、女性が、ほとんど何の道具も使わず、手だけで作り上げていきます。壺の製作にはろくろを使いますが、それも古タイヤを改造したもの。そのような簡単な道具で見事なものを作り上げていく様子は、さすがに伝統の力と感心せずにはいられません。