村から村へ渡り歩いたドクラという真鍮細工師たち

バンクラ近郊には「ドクラ」と呼ばれる真鍮細工師も住んでいます。かつてドクラは村から村へ渡り歩き、鍋や農機具を売ったり、修理したりして生計を立てていました。現在では定住するようになり、真鍮細工を生業としています。真鍮細工には様々なものがありますが、テラコッタでも作られている馬の像、鹿やカメなどの動物、あるいは人々の生活や神話の一場面など多種多様です。コルカタやニューデリーなどには、インドの各州政府が運営するエンポリウム(手工芸品店)がありますが、そういったところでは必ず売っているので、インドに行くと見かけることも多いでしょう。大きなものは1m近くあり、数十キロという重さの作品もあります。そういったものはどのように作られているのでしょうか。

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真鍮細工はどうやって作られる?

実際に現場へ行くと、拍子抜けするぐらい小規模な手工芸です。設備らしい設備は何もありません。真鍮細工は「失蠟法」というやり方で製作されています。まず蜜蠟という柔らかい粘土のような蠟で原型を作ります。蠟の一種ですので、熱すると溶ける性質があります。それを粘土で覆い、硬くなるまで乾燥させます。そして硬くなった粘土に熱を加えると、中の蠟が溶けて流れ出し、その結果、粘土の中に原型の空洞ができます。その空洞に、今度は溶けた真鍮を流し込むのです。真鍮が冷えて固まったら、外の泥を壊すと、蜜蠟で作った原型と同じ真鍮の細工ができあがります。

ほとんど道具がない真鍮細工の製作

真鍮を溶かすのに炉のようなものがあるのかと思いましたが、ここにはそんなものはありません。地面にレンガを数個置き、そこに燃料の薪を置いて、送風機で風を送って火をおこします。火の上に材料の真鍮を入れた鍋を置いて溶かすだけ。材料は古くなった鍋や食器です。リサイクルなのですね。蜜蠟の原型を包んだ粘土は天日干し。電気を使う道具は、粘土の中から出た真鍮細工をきれいに仕上げるための回転ヤスリだけです。このような田舎の村は電気さえ引いてないところがまだ多いので、おそらく近年になって導入されたものでしょう。こういう細工を、地面にぺたんと座り込んで、ラジオなどを聴きながらのんびりとやっています。それで魔法のように精巧な細工が生み出されることに、驚かされるばかりです。