天空の秘境・チベットを訪ねて

澄みきった青空に浮かぶ壮麗な寺院、本堂に鳴り響く読経の声、忙しげに行き交う赤と黄色の僧衣をまとった少年僧たち……寺院の入り口には経文が書かれたタルチョ(旗)がひるがえり、信者たちは経文が収められたマニ車を回しながら寺院を参拝します。チベットは一度は訪れてみたいあこがれの地。ここで信仰されているのは、ヒンズー教や原始の仏教の色を色濃く残したチベット仏教です。観音菩薩や薬師如来、文殊菩薩など日本でもなじみ深い神様・仏様が仏像や仏画に描かれていますが、その表現方法は、極彩色だったり恐ろしげだったり日本とはずいぶん違うもので、その迫力も見所のひとつです。

限りなく天に近い地・チベット仏教の世界を訪ねて 限りなく天に近い地・チベット仏教の世界を訪ねて

チベット仏教とチベット人の心のふるさと、ラサ

チベットと言ってもその範囲は広く、最も知られているのは中国のチベット自治区でしょう。中心地のラサはチベット最大の都市で、チベットの宗教・政治・経済の中心地でした。現在インドのダラムサラに亡命中のダライ・ラマが暮らしていたポタラ宮をはじめ、数多くの寺院があり僧侶たちが修行をしています。自治区内にはツェタンやシガツェなどの古都も点在しています。ラサのポタラ宮とジョカン寺院、ノルブリンカ宮はチベット人の聖地であり、世界に散らばるチベット仏教徒が巡礼に訪れます。多くのチベット人が五体投地で一心不乱に祈りを捧げる姿は胸を打ちます。

「幸福の国」ブータンはチベット仏教の国

「チベット」と言うと、ヒマラヤ周辺のチベット系の人々が暮らすエリアや、漠然と「チベット仏教を信じる人々が暮らすエリア」を指すこともあります。ブータンはチベット仏教を国教にする世界でただひとつの国で、おもな町には立派な寺院があり、祭日には華やかな踊りが繰り広げられます。現代アートのようなマンダラ図や古い仏教美術品も見応え充分。豊かな田園や素朴な山里の風景、日本人にどことなく顔つきと民族衣装に出会えるブータンは、日本人にも人気急上昇の国です。

天空の小チベット・ラダックで出会う青の湖

インド北端のラダックは「小チベット」とも呼ばれます。ここに暮らすラダック人はチベット仏教を信じ、インドに攻め落とされるまで強大な王国を築いてきました。岩山や砂地が続く月面のような風景、ときどき現れる緑のオアシスは普通イメージするインドとはまったくの別世界。寺院に残る仏像や仏画は歴史的にも貴重なものが多く、アート作品としても高く評価されています。日本でもヒットした映画「きっと、うまくいく」のロケ地にもなった青い湖パンゴン湖もラダックにあり、映画のヒット後は、インド人観光客も多く訪れています。映画ファンにはおすすめスポットですが、湖の標高は4000メートル以上。湖に限らず、チベット圏はヒマラヤの周辺に点在しているため、ほとんどの場所の標高は2000メートルから3000メートル以上と高所です。滞在中は、高山病に充分ご注意を。