2度目のインド・ヒマラヤでの執筆旅行

前年、マナーリでの執筆旅行に気をよくした僕は、次の年の夏にもふたたびインドを目指しました。ただ、できればもう少し田舎に行きたい。どこかいいところはないかデリーで聞いて回ると、日本人女性のKさんが民泊先を紹介してくれたのです。彼女は北インドに長く、布の研究をしている人でした。場所は、マナーリのあるクル渓谷の隣にあるパールバティー渓谷です。バスの終点はシク教の聖地マニカラン。温泉地として有名です。ですが今回は、町ではなく、途中の小さな村で民泊するのです。デリーからバスで1泊、20時間くらいはかかったでしょうか。教えてもらった村に民泊の家を発見しました。木造の二階家で、八畳ほどの部屋には真ん中に囲炉裏があります。部屋の前はベランダです。まともや雪を頂くヒマラヤの絶景が拝めます。基本三食賄い付きでした。

ここでも絶景が拝めます(パールバティー渓谷) ここでも絶景が拝めます(パールバティー渓谷)

1種類しかない食卓に嫌気がさしたこともあり…

当初、ここでも執筆生活は良好でした。温泉はありませんが、静かで気持ちいいのです。食事は三食、その家のママが作ってくれます。大抵ベジタブルカレーが2種類とライスかチャパティーです。これが素朴でうまいのです。ジャガイモ、ナス、豆、キャベツ、ウリ、ホウレンソウなど、ヘルシーなベジタリアンメニューで、自ずからダイエットにもなりました。広い板の間の部屋は毎日自分できれいに掃除し、ここでヨガをやって体をほぐします。頭が冴えて、執筆が進みます。ところがある日、ママが突然いなくなってしまいました。近所の人の話では、クルにいる恋人のところに行ったとのこと。なんと自由なんでしょう。しかしおやじさんは当然沈み、彼の作る1種類しかないカレーを侘しく食べる毎日に。そんな時、Kさんがひょっこり現れ、2人で気晴らしにトレッキングに行くことになりました。

お世話になったご夫婦(仲がよかった時) お世話になったご夫婦(仲がよかった時)

聖地キリガンガへトレッキング

まずはバスでマニカランまで行き、そこからはトレッキングです。標高2500メートルほどの山道を、息を切らしながらKさんについて行きます。夕方近くになって台地のような地形のプルガに到着しました。5000メートル級のヒマラヤが眼前に迫ってきています。数軒のゲストハウスがありましたが、Kさんの恋人の家族が暮らす掘立小屋で寝ることに。6人家族がそこに暮らしていました。仕事は牧畜。翌日は巨木のヒマラヤ杉が生える森の中を歩きます。そして到着したのが聖地キリガンガです。渓谷の先にせり上がる雪山を正面に、透き通ったコバルトブルーの温泉がわき出ていました。サドゥー(修行僧)たちは近くの洞窟で暮らしています。そんな彼らと、まったり温泉に浸かります。インドの温泉に、サドゥーはつきものですね。生涯一の絶景の温泉でした。この年も2か月間滞在し、本を1冊書き上げました。