フレスコ画とシェカワティ地方

壁に漆喰を塗り、まだそれが塗れているうちに描いた絵のことをフレスコ画といいます。バチカンのシスティーナ礼拝堂のものや、ギリシャ正教またはロシア正教ものなどを思い浮かべる人が多いと思いますが、なんとインドにも独自の発展を遂げたフレスコ画が存在するのです。それが集中して見られるのは、インド北西部に位置するラージャスターン州のシェカワティ地方。壁にフレスコ画が描かれたハヴェーリーという邸宅が密集する様子は「ラージャスターンの青空美術館」と呼ばれています。

美しいフレスコ画の邸宅が密集する「青空美術館」、インドのシェカワティ地方へ 美しいフレスコ画の邸宅が密集する「青空美術館」、インドのシェカワティ地方へ

なぜフレスコ画が多いのか

シェカワティ地方に点在する町は、どこも散策が楽しい場所。2〜3階建ての大きなハヴェーリーが軒を連ね、その多くに凝ったフレスコ画が描かれています。内部を公開しているハヴェーリーに足を踏み入れると、そこもまたフレスコ画でいっぱいで、まるで宮殿のよう。なぜこのような邸宅が多いのかというと、この地域はインド西部のグジャラートからデリーへと、物資を運ぶ交易路の要衝だったため。富を蓄えた商人がハヴェーリーの建築を命じ、その壁を競うようにして美しいフレスコ画で飾りました。今は半砂漠の中にある小さな町にすぎませんが、こうしたハヴェーリーの数々が、当時の繁栄を今に伝えています。

フレスコ画の移り変わり

この地方で見られるハヴェーリーのほとんどは、18〜20世紀に建てられたもの。初期の頃、顔料には銅、鉛、金、藍、ラピスラズリなどが使われました。しかし1860年代に人工顔料が導入されると、フレスコ画の色合いはそれまでのナチュラルさが消え、人工的なものに変化。初期のフレスコ画には、イスラム王朝であるムガル朝の影響が顕著で、幾何学模様を多用しています。続いてラージプート王室の影響による、ヒンドゥー神話に題材を得たフレスコ画が描かれるようになります。そして面白いのが、ヨーロッパ人がやってきてからの絵。列車や飛行機、電話、自転車、蓄音機など、絵師が想像で描いた近代機器のフレスコ画が多く見られるのです。

シェカワティ地方で訪れたい町とは

フレスコ画が見られるおもな町は、ハヴェーリーが多いマンダワ、質のよいフレスコ画が見られると評判のナワルガール、同じくフレスコ画で知られるファテープルなど。そのほかに、シェカワティ地方最大の町のひとつであるジュンジュヌー、のどかな村ドゥンドロッドなどがあります。マンダワとナワルガールにはホテルが多く、滞在にも便利です。デリーから200kmちょっとという、距離的にも首都からあまり遠くない地域ですので、世界一の密集度を誇るというシェカワティ地方のフレスコ画を、機会があれば、ぜひ見に行ってください。