高層ビルと洗濯場のコントラスト

前編からの続きです。ムンバイの近郊列車ウエスタン・レイルウェイに乗って、マハーラクシュミー駅で下車しました。駅舎の2階から、建物の屋上にびっしりと干された洗濯物が見えます。そこで写真を撮っていると、地元の男性が「ここじゃないよ。駅を出て跨線橋の上に行くともっとよく見えるよ」と教えてくれました。言われたとおり、駅を出て左手の跨線橋を渡ります。近代的な高層ビルを背景に、巨大な洗濯場が現れました。

洗濯物を石に叩きつけて汚れを落とします 洗濯物を石に叩きつけて汚れを落とします

圧巻! びっしりと屋上に干された洗濯物

ドービー・ガートは周囲を高い塀で囲まれており、その内側には、塀に沿うようにバラックの長屋が続いています。5000人以上の人々がこの中で暮らし、働いているのだそうです。長屋の屋上は洗濯物干し場になっていて、タオルはタオルだけ、シャツはシャツだけと、それぞれの受け持ちの洗濯物がびっしりと干されていました。私が訪れたのは午前中の早い時間でしたが、一晩干して乾いたものを取り込んでいるところもあれば、今朝洗ったものを干しているところもあります。ここに持ち込まれる洗濯物は1日に1万枚。一日に何回、洗って干してが繰り返されるのでしょうか。

昔ながらの手洗いと機械の導入

建物の間には、コンクリートで小さく区分けされた洗濯場があります。ドービーマンが洗濯物を石に叩きつけて洗うのを見ていると、かなりの重労働だと思われます。このドービー・ガートで洗濯してもらう方が、洗濯機の電気代より安いといいますが、いったい彼らはいくらでこの仕事を請け負っているのでしょう。1日14時間〜16時間働いて、彼らの日給は150ルピーくらいだそうです。すべて手作業かと思っていましたが、ドラム式の脱水機も使われていました。屋内ではアイロンがけ担当の人たちが、毎日数百枚もの洗濯物にアイロンをかけています。

見事な仕事ぶりに圧倒される

他人の汚したものを扱う洗濯人は、カーストにすら入ることが出来ない、不可触民と呼ばれる人たちだそうです。しかしここは、スラムのような貧困の場ではありません。長屋には衛星放送のパラボラが立ち、休憩中のドービーマンたちはスマホをいじっていました。低賃金とはいえ毎日きちんと仕事が入ってきて、安定した生活を送る彼らは、もしかしたら、貧困にあえいで暮らす上位カーストの人たちよりも恵まれた環境にあるといえるのかもしれません。ドービー・ガートは見るものに強烈な印象を与えますが、それは決して悲惨な光景だからではなく、彼らのプロフェッショナルな仕事ぶりに圧倒されるからだと思います。