ダウが造られるインド西部の街ポルバンダール

その伝統の技法で、現在でもダウを製造し続けているところのひとつに、インド西部グジャラート州のポルバンダルという街があります。マハトマ・ガンディー生誕の地として知られていますが、歴史的にも古い貿易港として栄えたところでした。16世紀ごろのグジャラートは、東南アジア、中国、中東、東アフリカの国々との貿易を盛んに行っていましたが、ポルバンダルも重要な貿易港だったのです。今はもう貿易港としての面影はありませんが、街の外れにある港へ行くと、そこでダウが造られているのです。

木造帆船ダウでアラビア海を船旅する人々(後編) 木造帆船ダウでアラビア海を船旅する人々(後編)

造船所もないところでダウは造られる

ポルバンダルの港には、日本の造船所のような大きなドックはありません。人々は何もない砂浜で船を造っているのです。足場を組んで、長さが30mもあるような大型のダウを組み立てていきます。クレーンのような重機さえ見あたりません。電動のこぎりぐらいは使っていますが、あとは手ノミで木を彫っているのです。つまり、ほぼ手づくり。これで大きな船を造っているのですから、一艘造るにはおおよそ1年かかるそうです。港を見渡すと、造りかけのダウが何艘もあちこちにあります。インドは古い伝統を大切に受け継いでいる国ですが、船を造るのにもここまで伝統的な方法であることに本当に驚きます。

今でもあるシンドバットの世界

現在でもアラビア海を航行するダウは、航海の道具として磁気コンパスと海図しか使わないそうです。目的地までの方角と距離を海図で調べ、陸地を見ながら現在位置を確認します。季節風を捉えて進んでいくダウの航海。私たちが海外へ行くとき、飛行機に乗り、大きなエンジンが付いた船に乗ります。それ以外に方法があることは考えられませんが、実は今でもこうやって自然の力を利用して、大海を渡る船の旅が行われているのですね。まさにシンドバットの世界です。この現代で、こういう船が人の手で造られ、そして海を渡っていると思うと、世界の奥の深さを感じずにはいられませんね。